一般用医薬品:対面販売なんかいらない

井上 晃宏

一般用医薬品販売問題で、無視されている論点がある。一般用医薬品は、大半が、家庭内で、いったん保管されてから使われるということだ。


処方せん医薬品は、購入直後に使用される。余った医薬品は、誤用を防ぐために、捨てることが推奨されている。だから、対面で説明することにも、若干の意味はある。

一般用医薬品は、そうではない。薬は家庭内に保管され、使用時に引っぱり出される。店頭で何を言われようと、憶えていないし、使用者は本人でないことがある。

医薬品使用時に参照されるのは、医薬品の箱と添付文書だ。しかし、問題がある。箱が小さすぎる。記載面積が小さいために、文字が小さい。折りたたまれている添付文書すら、表示が小さく、読みにくい。

こんな表示が、目の悪い高齢者に読めるのだろうか。もちろん、読めない。高齢者は、自宅で手探りで薬を選んで、適当に飲んでいる。自分の使っている薬が、「胃痛」の薬なのか、「頭痛」の薬なのかすら、把握していない。用法用量も適当だ。店頭で複雑な注意事項を言われても、1ヶ月前のことなんて憶えていない。

一般用医薬品販売業者が、本当に、顧客への情報提供が大事だと思うなら、製薬会社に申し入れて、パッケージと添付文書とを大型化するべきだ。

中身がほんのわずかでも、パッケージが大きい商品はいくらでもある。たとえば、コンピューターソフトだ。中身はDVD-ROMと簡易なマニュアルしかないが、パッケージはA4くらいある。

医薬品の箱は、薬屋の棚や薬箱に入れてしまっておくことを前提にしているから小さいのであり、A4サイズにしても、本のように、棚に立てて置くなら、決して大きくない。箱と薬とを分離されないように、箱に薬シートを直付にしてもいい。

ネット販売が危険だとか妄言を吐く人々がいるようだが、ネット販売の顧客は、少なくとも、字が読める。字の読めない人にも売ってしまう対面販売よりは、ずっと安全だ。

井上晃宏(医師、薬剤師)