ネットが発達しても、情報はフェース・トゥー・フェースで伝えられる --- 内藤 忍

アゴラ


旅の連載「Viaggio」の取材で小布施にある、桝一客殿さんにお邪魔しています。新幹線で長野まで行って、長野電鉄で20分ほど。東京からは想像以上にアクセスが良好な場所です。


宿の周りは「大人のテーマパーク」のようになっています。和の色調で統一された建物が並び、和菓子店、お土産物屋さん、カフェ、レストランなどを散策しながら一日楽しめます。特に中高年層のハートを鷲つかみにしてしまうような魅力に溢れています。

桝一市村酒造場と小布施堂の代表をされている市村次夫さんと対談をしたのですが、これが想像以上に刺激的で、日本の歴史の裏側を教えていただいたような気がしました。

江戸時代や明治時代には、情報は人から人へと伝えられていました。新しい世の中の動きも、人気のある商品も、情報はすべて人が介在していた訳です。つまり、人が集まる場所に情報が集まり、その場所が情報を元に栄えることができた。だから情報を持っている人が集まる仕組みがある街が栄えたというのです。

人が集まるインセンティブは今も昔も変わりません。楽しいことがあるか、美味しいものああるかです。刺激的な面白い人が集まる場所には、彼らとコンタクトしたい別の人たちが集まってきます。文化人や芸術家が集まれば、昔の人でも他の街から来たそんな人に会いたいと思ったはずです。

そしてもう1つはもてなしです。その街に行くと、美味しい料理と美味しいお酒で心からもてなしてくれる。そんな場所があれば、誰でも行きたくなってしまいます。

小布施という街は決して地の利が良い訳ではありません。しかし、葛飾北斎が数年間滞在したことでもわかるように面白い人、変わった人を受け入れてしまう伝統があるようです。最近では、市村さんが、アメリカ人のセーラ・マリ・カミングスさんを採用し、街を変えるカオスとしての役割を期待したと言います。外部の異なる価値観を入れることによって、街を魅力あるものにしていこうとしているのです。

インターネットが発達して、顔を合わせなくても情報がネット上で行きかうようになりました。しかし、未だに重要な情報は顔を合わせて、話をすることによって伝えられていきます。

例えば、地方にある有名なオーベルジュのオーナーさんたちが、頻繁に東京に出かけていくのは、遊びに行っているのではなく、情報の収集に出かけているのです。別の街に行って、街の空気に触れ、人に会い、食事をして、情報を交換する。ネットがこれだけ発達しても、いや発達しているからこそ、本物の情報を得るためには手間をかけて人に会うことが大切。

また、自分で会いに行くのも重要だけど、自分の街に面白いことがあって、美味しいものがあれば、人が情報を持って集まってきてくれる。小布施が目指しているのはそんなポジショニングではないでしょうか。

長野や松本よりももしかしたら、活気に溢れ、全国から人が集まってくる小布施。情報は人から人に伝えられることを理解し、江戸時代から変わらない「情報戦略」を続けている。凄い街だと思いました。

(写真はランチで頂いたアスパラの入ったそうめん)


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年5月30日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。