参議院選挙が、さりげなく問う、都道府県の存在意義

伊東 良平

7月21日は参議院通常選挙の投票日である。議席予測はマスコミに任せるとして、この選挙があぶり出す日本の縮図について考えてみたい。それは、是正することが不可能な一票の格差と、そこから導き出させる都道府県の意義に関してである。

毎度くだらない分析で恐縮であるが、一票の格差を最小にするために必要な議席数と、その議席数を1議席づつ減らすごとに生じる1票の最大格差を計算してみた。入手できた有権者数の公式発表をデータが若干古いがご容赦頂きたい。

まず、有権者数の最も少ない鳥取県に1議席を割当て、その有権者1人当りの人口ごとに全都道府県に議席を割当てるには、233議席の改選が必要になる。議席数はその倍の466議席となる。一票の最大格差は1.61で、これは隣りの島根県(2番目に有権者数が少ない県)に2議席が配分されるためである。議員数は整数でなければならないから、一票の格差はどうしても生じてしまう。これは仕方がない。その議席数を、1議席当りに有権者数最も少ない都道府県から1議席づつ減らしてゆく、だだし1議席の都道府県からは減らさない、という計算を繰り返してゆくと、[図1]の結果が得られる。図がわかりにくくて申し訳けないが、有権者数の多い都道府県の議席数がすこしづつ減り、最後は等間隔の縞になる。最小は、各都道府県に1議席が割当てられるケースである。これは、アメリカの上院議員に近い状況である。この場合の一票の最大格差は約20倍である。

各総改選数の、各都道府県の議員1人当りの有権者数を示したものが[図2]である。当然ながら、総改選議席数が減るほど、有権者数の多い都道府県の1議席当りの有権者数が増える(1票の格差が広がる)。総改選議席数ごとの1票の最大格差を紅点線で示した。

つまり、当然のことながら、参議院議員の定数削減を進めるほど、一票の格差は開いてゆく。当たり前のことだが、一票の格差を是正するには、都道府県に必ず1議席を配分するという”原則”を破るしかない。人口の少ない県は、隣接県と同じ選挙区になってもらうしかない。

そこで論理は飛躍するが、そもそも都道府県の役割とは何なのか、という疑問に突き当らざるを得ない。都道府県は廃藩置県以後、必ずあるものという無意味な前提を持ってはいないだろうか。都道府県は地方公共団体であり、アメリカの州や中国の省とは異なり、行政サービスを提供するグルーピングに過ぎない。市町村と国との間にあって、都道府県は何のために存在するのか、もう一度考え直してはどうだろうか。各県には「地方合同庁舎」と呼ばれる地域の出先機関が存在する。そのような事務所が存在すること自体、県庁所在地では事務ができない、と自認しているようなものである。もちろん、市町村単位では対応できない行政サービスも数多くある。しかし、それが広域事業組合や国の出先機関で対応できない理由がどれくらいあるだろうか。

県の廃止というとすぐに「道州制」が唱えられるが、現在の都道府県を集めてくっつけても、行政機構の組み合わせが変わるだけで大した意味はない。むしろ単純に、都道府県の合併や分割(市町村ごとの集まり方を見直す)を試したらどうだろうか。いや、大した信念もない思いつきで申し訳ない。これは実現する意義も動機もないだろう。

とにかく、参議院のあり方と、都道府県のあり方は、やわらかく結び付いている。先週、全国知事会議が開催されたが、国会よりも具体的な政策課題に関する様々な議論が交わされたように(議事録を見る限り)感じられる。こう見ると、国会議員選びよりも、知事選びや市町村長選びが、より重要なのかもしれない。

伊東 良平
一級建築士/不動産鑑定士
(公共施設マネジメントと公会計に関するコンサルティングも行う)