問題の麻生発言の全文とみられるものが朝日新聞のデジタル版に出た。共同や読売が問題にしたのは、次の部分だ。
昔は[靖国神社に]静かに行っておられました。各総理も行っておられた。いつから騒ぎにした。マスコミですよ。いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら、中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。だから、静かにやろうやと。憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。
ここにはいくつか事実誤認がある。まずJBpressにも書いたように、ナチスは全権委任法でワイマール憲法を換骨奪胎したのであって、憲法は改正していない。第2に、全権委任法は「だれも気づかないで変わった」のではなく、ヒトラーが国会放火事件を口実にして共産党を拘束するなど、騒然たる「非常事態」を演出して制定されたのだ。
「あの手口に学んだらどうかね」というのは、「憲法を変えないで有事立法で独裁制に変えろ」と解釈すると不穏当だが、彼が上のように誤解しているとすると、そういう意味ではなく、単に「まわりの国を刺激しないように淡々と改正を議論しろ」という意味だと思われる。
麻生氏も謝罪したことだし、この程度の事実誤認はそれほど騒ぐこともない。それより一次情報も確認しないでサイモン・ウィーゼンタール・センターのコメントを取りに行く朝日新聞のほうが問題だ。これこそ麻生氏のいう「騒ぎを作り出すマスコミ」の悪しき典型である。