大学のクラスメイトで、ネット証券の創業者でもある友人と、四谷の小さな焼き鳥店でサシで飲みました。大学1年の時に出会ってからもう30年以上の付き合い。そして、1999年にベンチャーの創業を一緒にやった頃から15年近くが経ってしまいました。近くにいたり、遠くになったり、距離は変化しても、どこかに同じ波長を感じてしまう不思議な関係が続いています。昨日も着ているシャツが色違いのまったく同じデザインのものだったのには驚きました。
起業をして、経営者として会社を軌道に乗せ、社会に価値を提供している姿は、同じ年齢の私にはとてもマネのできないこと。才能と努力にはいつも尊敬の念を抱きます。
仕事からプライベートまで話は尽きず、ここには書けない話もたくさんありましたが、話題がベンチャー企業の話になった時、興味深い見方を聞きました。
それは、ベンチャーの成功に一番大切なものは何かという疑問です。一般に言われているような、本人の才能や努力、あるいは独創的なビジネスアイディアより大切なものがあるという見立てでした。
起業家に一番求められる資質。それは「人に好かれること」だと言うのです。
どんなに才能があって能力が高くても、1人でできることには限界があります。周りの人たちを巻き込んで、力を合わせていくことが、特にスタートアップの小さな会社には必須の条件なのです。
人に好かれる人は、周りに人が集まってきます。その人を慕って一緒に働きたい、同じ方向を向いていきたいと思わせるのです。
また、社外からサポートしてくれる人たちも出てきます。出資してくれる人のような金銭面だけではなく、人を紹介してくれたり、取引先を開拓してくれたり。
このような周囲の人の支えが、同じベクトルでまとまることで大きな力になり、会社としての力をつけていくのです。
言われてみると、会社を立ち上げた他の友人を見ても、うまくいっているのは、必ずしも頭脳明晰な「切れ者」とは限りません。むしろ、ちょっと危なっかしくて、助けてあげないとこの人は心配だと思わせてしまうような人の方が、順調にビジネスを拡大したりしているのです。
経営とは、自分が有能である必要はなく、有能な人を集められれば良いのです。
「人に好かれる」のは、先天的な能力なのか?それとも努力によって得られる力なのか?私にはわかりません。しかし、人間として言葉では説明のできない魅力のある人、何だか近くにいたいと思ってしまう人、力を貸してあげたいと思わせる人、そんな人は起業に向いていると言えます。
ビジネスモデルの優劣や商品・サービスの独創性があっても、人に好かれなければビジネスにつながりにくい。
自らも起業家であり、現在までに多くの会社の起業を見てきたからこその洞察力は、さすがに奥深いです。ただお酒を飲んだたけなのに、何だか世の中の見方が変わるくらい勉強になった夜でした。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年8月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。