太陽光発電による脱原発の可能性を考える(5) ~系統対策コスト上澄み~ --- うさみ のりや

アゴラ

前回に続き、しつこく太陽光発電による脱原発の可能性を考えてみます。

とりあえず前回の試算から「電気系統のインフラ再整備にかかる費用を含まなければ、2025~2030年ごろには太陽光発電の発電コストは7.8円/kwh程度までさがる」ということを引き継いで、今回は「では系統対策コストを考慮した場合、太陽光発電は原発レベルの8.9円/kwhを達成できるのか?」という観点で議論を始めたいと思います。

太陽光発電の大量導入に伴う問題

まずは「太陽光発電が大量に導入されるとどういう問題が生じるのか」という定性的な話から入りたいと思います。まず基本的な知識として水が高いところから低いところに流れるように、電気は電圧が高い方から低い方へ流れます。現状のインフラでは大規模発電所で超高圧の電気が作られ、いくつかの変電所を経て徐々に電圧が下がっていきます。

(日立HPより引用:http://www.hitachi.co.jp/Div/omika/product_solution/energy/power_distribution/electric_protection/)

太陽光発電を中心とする分散型電源の導入にあたってはこの通常の流れを逆にして末端の電線側から電気を配電用変電所に流して(「逆潮流」といいます)電気を買い上げ再分配している、のですが、この中で逆向きの電気の流れが配電用変電所に集中してしまうと、系統側の電圧があがりすぎて、電力保安の観点から逆潮流を止めてしまうことがあります。これを分散電源側からの目線で表すと下のような図になります。

(太陽光生活ドットコム様から引用:http://taiyoseikatsu.com/faq/faq067.html)

一方より俯瞰的に電力網全体から見てみると、これは分散型電源側から出力される電力の総量が配電用変電所の総負荷をこえてさらに上の層の配電所に流れ出そうとしているので逆潮流を止めている、ということになります。難しく書きましたが、要はキャパオーバーの電気が流れ込んできているのでその分散型電源からの買い取りを中止しているってことで、逆に言えば現状の系統ネットワークを前提とする限りは分散型電源から買い上げて再配分できる電力には上限があるということです。

(経済産業省資料より引用:http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/hoan/denryoku_anzen/pdf/002_08_00.pdf)

逆潮流対策の方向性

太陽光発電を大量に導入するとこうした系統限界の問題が多発することが予測され、現に北海道電力は既に系統制約を理由に太陽光発電設備からの買い取りに制限をかけています。(通称「北電ショック」:http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/480561.html)今のところ経済産業省は暫定的な対策として逆潮流の規制を緩和し、より高位層の変電所も考慮に入れた制御を進めることで再生可能エネルギーの導入を進めようとしていますが、これは対症療法で根本的には

【①系統側の変電所のスペックをあげたり、ネットワークを構成し直したりするか(系統増強策)】

【②変電所に大規模な蓄電池を併設することで逆潮流の問題が起きそうになったら、避難所的にその電気を蓄電に回せるようにするか(蓄電池配備策)】

のいずれかの措置をとることが求められます。コストと状況に応じて両手法を使い分けていくことが今後求められる訳ですが、相対的に蓄電池配備は割高な傾向がありますし、そもそもせっかく作った電力をためることは損失が出てもったいないので、どちらかと言えば系統増強に比重がおかれることになります(その辺の詳細はこちらを参照あれ:http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/18th/18-5.pdf

系統対策コスト試算

こんなことを前提に再生可能エネルギーの大量導入を見据えていくつかの系統対策コストに関する試算が出されているのですが、これが試算ごとに数値が数兆円から数十兆円まで大きく異なり百家迷走状態です。とはいえ一応本家の経済産業省案をベースに議論が進んでいるのでそのデータを採用すると、昨年の総合資源エネルギー調査会で示された資料では、原発を2030年にゼロにするには累計で21兆円ほどの系統対策コストがかかるとされています。この試算では風力発電の比率がやや高めに設定されていて太陽光発電を重視する今回のテーマとはやや前提が異なるのですが、広い意味で再生可能エネルギー対応の配電網を作るというところでそこは目をつぶるとして、この数値を前提に単年あたりに電気料金にどれくらい上昇圧力がかかるか考えてみたいと思います。

固定価格買取り制度の開始と大型太陽光発電案件のスタートは建設・調整期間があるため当然ギャップが生じるので再来年あたりから対策が本格化すると想定して2030年までの15年間で系統対策の工事を終えると考え、その原資を電力料金の値上げ分から徴収すると考えると、【21兆円÷15兆=1.4兆円】ほど単年度あたり電気料金の上昇圧力が生じるものとします。

これに対して電力会社の電気事業の総収益を電事連(https://www.fepc.or.jp/library/data/tokei/index.html)のデータから直近5~6年を調べてみると以下の通りで、だいたい電気の売り上げは全部で15兆円程度ということがわかります。ここに系統対策コスト分の1.4兆円負荷されるとどれくらいの価格インパクトがあると考えたいと思います。

少し古いですが、2010年のデータでは住宅向け、産業向け合わせた電気料金の平均は15.90円/kwhですので、ここに系統対策の追加コストの分を割合で上積みさせる形で考えると

<系統対策コスト転嫁分= 現状の料金×(必要経費/電気売上)

           = 15.9円/kwh×(1.4兆/15兆)

           ≒ 1,5円/kwh

となります。これを、将来的な太陽光発電のコストは7.8円/kwhに足すと9.3円/kwhとなり、原発の発電コストである8.9円/kwhをほぼ同等かやや上回る、ということになりました。系統コストって巨額に思えますけど、電気代換算するとそこまでってわけでもないんですね。

総評

ということで本日の結論。系統対策コストを入れこむと【 太陽光発電の発電コスト(7.8円/kwh)> 原発の発電コスト(8.9円/kwh)】となるわけで、

「系統対策コストを考慮すると2030年時点では、太陽光エネルギーの発電コストは9.3円/kwhまでにしかならず原発の8.9円/kwhに及ばない。」

ということにさせていただきたいと思います。個人的にはこれくらいの料金加算なら新しいビジネスチャンスもたくさん生まれそうですし、再生可能エネルギーの推進も悪くはないなと思いはじめました。

次回はエネルギーミックスの観点を加えて他の電源との組み合わせを考えてみたいと思います。

ではでは今日はこんなところで。


編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2013年8月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。