日本で最も出生率の低い自治体

本山 勝寛

現在、日本の出生率(合計特殊出生率)は1.41と、2005年に1.26まで落ち込んだ時期よりもやや回復しているが、依然として低い水準にあることはよく知られている。1.41という値はあくまで日本全国の平均値であるが、市町村別でみるとその値はかなり変わってくる。では、日本で最も出生率が低い自治体をご存じだろうか?気になって調べてみたら、なんと私が住んでいる渋谷区だった。渋谷区の2011年の出生率は0.86と、全国平均はおろか、東京都全体の1.06よりもかなり低い。


しかも、この値ですら近年回復した数字で、2005年には0.70を記録している。おそらく、日本の基礎自治体の歴史のなかで最も低かった値だろう。渋谷区はセンター街を中心とした渋谷のイメージが強いから、さもありなんと思うかもしれないが、それなりに住宅地も擁している。また、中野区、杉並区、目黒区もほぼ同様の値であり、渋谷区のみ特殊というわけでもない。東京や京都、大阪、福岡などの区部が同じ問題を抱えているのだ。

出生率0.7といえば、ものすごく単純計算して、親世代が100人だとすると、子どもの世代では35人に、孫の世代で12人と、二世代後には世代人口が一桁変わってしまうということだ。こんな社会は早々に滅びるほかないだろう。実際は、渋谷区をはじめ都市部は出生率が比較的高い地方から人口を吸収しており、上記のような極端なことにはならない。とはいえ、出生率1.0を切っているような地域は、実質上一人っ子政策を実施しているようなもので、子どもを生み育てにくい、かなりいびつな住環境になっているということであり、各自治体はそのような認識のもと、適切な施策を打ってもらいたいところである。

実は、日本だけでなく、アジアの大都市は軒並み低出生率に直面している。マカオは0.95、バンコクは0.9未満、上海は0.8という。しかし、出生率が2.0を越えたフランスでは、人口1200万人を擁するパリ都市圏でも高い出生率を維持しているようだ。住居費の高さや土地の狭さを言い訳にせず、子育て世代への経済支援、保育サービスと学校教育、学童の充実、育休制度の整備、男女を含む働き方の見直しなど、あらゆる施策を実施すれば、効果をあげることは不可能ではない。

「若者の街」渋谷区も、子どもが絶えない街にしたいものだ。少なくとも、子どもたちや孫たちが、少ない人数で多数の老人を支えるのに精一杯の社会にはしたくないと思うのは私だけだろうか。

学びのエバンジェリスト
本山勝寛
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「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。