ローレンス・サマーズ氏が次期FRB議長としてオバマ大統領に推挙されるのではないか、という日経の記事は世界が注目したスクープとなったようです。多分、大半の日本人にとってFRBとかサマーズという名前を見てもなんら反応すらしないかもしれません。ですが、FRBとはアメリカの中央銀行のようなものであり、そこのトップに座る人の権限は大きく、アメリカの経済のみならず、基軸通貨としてのドルをコントロールするわけですからある意味、世界の通貨の番人のようなものなのです。
当然ながらFRBの議長に誰がなるかというのは安倍首相や黒田日銀総裁から多くのバンカーや投資家まで固唾を呑んで見守ることになります。
ローレンス・サマーズとは誰か、以前、書きましたがあえてもう一度書かせていただきます。
父方のおじさんはポール・サミュエルソン、母方のおじさんはケネス・アロー。二人ともノーベル賞を受賞した経済学者であるばかりでなく、近代経済学に大きな影響を与えた人物です。
当人はマサチューセッツ工科大学に16歳で入学、28歳でハーバード大学の教授になっています。公務としては財務長官を経てハーバード大学の学長を務めているのですが、この学長時代にちょっとしたつまずきがあります。いわゆる「素質の差」発言でこのあたりからサマーズ氏の天才的能力に対して彼の性格への評論が目立つようになるのです。要は頑固な性格ということであります。
ではこの頑固なサマーズ氏がFRB議長として推挙された意味は何か、私はもう一度考えてみました。バーナンキ議長の期間とはリーマン・ショックを経て世界経済が病み、そしてその治癒に時間を費やしていた時と完全に合致します。そしてバーナンキ氏が自発的に来年1月で降りるとしたのは自分の役目である世界経済がとりあえず自力で回復基調を辿るところまできたのでお役ご免、ということなのだと思います。
イェレン副議長がサマーズ氏の対抗馬として名前が挙がっていますが、イェレン氏はバーナンキ議長のやり方を踏襲すると考えられている人物と見られており、、その中であえてサマーズ氏を大統領が指名するならばそれはバーナンキ路線の終焉であり、アメリカが次のステップに入るという強い意思表示と考えてよいのではないでしょうか?
では次のステップとは何でしょう。私はもう一度、強いアメリカを実現させようとしている気がいたします。ドルも強くし、金融を通じた世界支配力を更に増すことは可能でしょう。事実、サマーズ氏になれば日本円は更に弱くなる可能性があり、日本経済にもプラスとなるかもしれません。それは逆説的にはアメリカと日本の関係がより親密になるともいえるのです。
また強いドルはアメリカ企業による外国企業の買収にも有利に働きます。今はアメリカは製造業の国内回帰が進みますが、地産地消の大きな流れは変わりませんし、企業買収を通じたアメリカ経済の強さは誰もが認めるところであります。
先日、落日のオバマ大統領というブログを書きましたが、オバマ氏としては必死の防戦をしているともいえるのかもしれません。勿論、サマーズ氏が議長になるためにはいくつものハードルがあり、それを乗り越えての話です。今後、一ヶ月ぐらいはこの話題が紙面をにぎわしそうですね。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年9月15日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。