ある企業体があるとする。その企業体は必ずある環境に置かれている。その環境というのは常に変動するものであり常に同じ状態とは限らない。この環境は企業体内部の組織構造を変える。変化する環境に適応し、生き残ってゆくために企業体自らが組織構造を変えてゆくとも言い換えられる。
外部環境と企業というのは相互に刺激し合うものであり、相互に変革をもたらすものだ。
つまり、ある企業体が置かれている外部環境を見れば、その組織がどういう組織なのかも分かるということである。この分析方法がいわゆる業界分析である。しかし、多くの就活生や転職希望者はこの事実をよく理解していない。
業界分析と言えば、どの業界ではどの会社のシェアがどのくらいとか、どの会社の業績が一番とかそういう視覚的な話題に食いつきがちだ。もちろん業界においてはどこがメジャーで、どこがチャレンジャーなのか視覚的に数字にできることを把握しておくのはもちろんだが、それはさして重要ではない。むしろ実際に身を置く組織というものが環境からどのように変容を遂げて今あるのかを分析することの方がはるかに重要である。
外部環境が組織を変えた例は多い。最近では、軍隊でも指揮系統に変化があった。第二次世界大戦を経て、先進国同士の戦争は今のところない。一方で増えているのは民兵や武装テロ、ゲリラなど従来想定されていなかった不確定な敵だ。こうした環境の変化を踏まえて、最近の軍隊ではミッションコマンドといって、司令部で目標を与えるが、現場の部隊が具体的な方法を考えるという柔軟性のある組織になってきている。これまでの上意下達の組織が環境によって姿を変えた例である。
おそらくこういう組織では目標の達成のために、現場にかなりの裁量が与えられているので、階級を問わず自分のアイデアや戦術次第では採用される可能性が高い。若いうちからやりがいを感じることのできるフィールドだと分析することができるだろう。
企業でも同じだ。私が経験したのはグローバルを謳っている日本でも有数のエネルギー企業だったが、この会社は組織が非常に古かった。部内旅行という旧態依然たる儀式もあり、その度に、この会社の看板に偽りありと思ったものだ。
しかし、グローバルを謳うこの会社の保守性は環境を考えれば明らかであった。なぜなら、エネルギー業界というのは何十年も前から事業環境は同じであり、企業の業績に景気変動の影響をあまり受けてこなかった。しかも、経済活動には基本的に必要とされる商材なため不景気でも最低限の需要は存在するのである。エネルギーという商材に支えられているため、特に事業環境を意識することもなく、今までのやり方を踏襲してきていたといえる。
ここまで話せば勘のいい方はこの会社がどういう組織だったかお分かりだろう。
この会社では嘱託再雇用といわれる人たちは仕事がなくてブラブラ会社を散歩していても、新卒社員の数倍の給料をもらっていた。若手の裁量はなく、パソコンメールもまともに見ない上司が判断を下す。現場の裁量ではなく常に、時代遅れの感覚で経営判断が決まる。実に、昔の古きよき日本企業だったのである。
このように環境を考えればある程度組織というものは見えてくる。私は国会議員の事務所から、政府、政党、NPO、社団法人、民間企業と軍隊以外の組織は一通り経験してきたが、環境から組織を分析することで適切なジョブマッチングが行われるのではないかと思う。
いたずらにその企業ばかりを見るのではなく、その環境をも客観的に見据えるチカラ。このチカラを養えば、各々に適した職場で仕事ができる人間が増え、日本の産業力や経済力は格段に向上するのではないだろうか。
やりたくもないことを、やりたくない人たちと一緒にやることはない。仕事というのは本来楽しく、創造的なものである。やりたいことを、一緒にやりたい人たちと楽しく仕事をすればよいのだ。
組織を見抜けなかった不良サラリーマンはこう思うのである。
佐藤 正幸
World Review通信アフリカ情報局 局長
アフリカ料理研究家、元内閣府大臣政務官秘書、衆議院議員秘書