私の尊敬する方の一人にライフネット生命の出口社長がいます。出口社長は「働くようになったら実家を出て一人で暮らすべき」と常々おっしゃっています。一人の人間として自立するためには親元から離れることが必要とおっしゃっている話を聞くたびに、未だに実家で仕事をしている私は胸が痛むものです(笑)(参照)
私も自立という意味では一人暮らしをすること、もしくはシェアハウスでもいいので親元を離れて住むことは重要だと思いますが、いわゆる「パラサイトシングル」という存在は日本だけではなく、アメリカでも増えてきているようです。
こちらのウォール・ストリート・ジャーナルの「米で親と同居の若年層増える―経済的理由と考え方の変化が背景 」によると、2000年初頭に親と同居する若年層の割合は10.6%だったのに対し、2012年には13.6%にまで上昇していると伝えています。3%ですからそこまで大きな差ではないにせよ、少しずつ増えているのは確かです。
分析によると、どうもリセッション時期、つまり経済が後退している不景気の時期に増えているようです。不景気になれば一人暮らしをするときにかかる家賃安い光熱費、食費などの支払い負担が厳しくなり、それよりも実家で暮らしておけば家賃や水光熱費などを貯金することができる、という考え方に変わってきているようです。たとえ実家にお金を入れたとしても、貯金できる金額はだいぶ違うでしょう。
一つの例として私の友人には大企業メーカーに勤めている男がいますが、彼は実家ぐらしをしていた23歳の新入社員時代に150万円を超える貯金をすることができました。対する一人暮らしをしているという友人も何人か知っていますが、100万円も貯金できたというような友人はいません。圧倒的に実家ぐらしのほうが使うお金も少なく、貯金に回せるのはその通りでしょう。
景気が悪くなってくると若者も保守的になって来るのかもしれません。一人暮らしよりも実家ぐらしを選びますし、さらにお金がかかる結婚を避けるのも不景気が影響しているのかもしれません。自立という一人の人間として必要な力を身につけるためには親元を離れた生活を学び、そして結婚をするということも重要かもしれません。しかし不景気の局面であえて実家を離れるということは経済的な出費が増えることは明らかであり、それが幸福につながるか?と問われると判断が分かれるところではないでしょうか。
ウォール・ストリート・ジャーナルの記事にも実家ぐらしをしている若者の声を紹介しています。
本当に望むなら家を出られるが、家賃やガス代のことを考えると、家にいた方がもっとお金をためられるような気がする」と話した。その上で、「今ためるのは将来への投資のようなものだ」と述べた。
「実家にいて将来のためにお金を貯める」ことは景気後退局面における若者の生きる術なのかもしれません。
個人的には一人の人間としての自立は必要であり、親元を離れることも必要だと思います。しかしそれが家賃や光熱費などの支出を上回るだけのメリットになりうるのか?答えを出せないでいます。