日本を愛してやまない中国のオタク女子たち。日本に憧れ、目を輝かせる大量の人々。
しかし、売れていないんです。
「売れている日本の女性ファッション誌は、中国市場で100万部近い数字を叩きだしている。この数字は日本での売り上げをはるかに凌駕する。」
「中国人の女性の意識は「日式vs韓式」なのだが、売られている商品は「中国(日本の流行を真似た服)vs韓国」という構図になっている。」
「日本ブランドが中国で稼げないのは、戦って敗れたからではない。不戦敗である。」
これは厳しいですね。人気があり、売ることができる環境にあるのに、売ろうとしていない、というのです。
「韓国企業が中国でできたことが、なぜ多くの日本企業ではできないのか。ひと言でいえば、本気度の違いといえる。」
そう感じます。それはファッションだけの問題ではありません。アニメや音楽でも同じことが言えます。家電や化粧品もそうでしょう。日本には大きな国内市場があったから、コストとリスクをかけて中国に進出するのは合理的ではなかった。ところが気がつけば国内市場は停滞し、成長する海外市場に目を付けざるを得ない。だが、国内市場が小さく、90年代後半の経済危機で本気度を高めた韓国がその市場を押さえにかかっている。
黄金のビジネスモデルを謳歌していたためにネット対応が遅れた日本の放送業界と同じ構図に見えます。
「北京や上海の女の子たちに、なぜK-POPグループは人気なのかと尋ねると「中国に来るから」という返事が圧倒的に多い。」
うえーん。
韓国はコンテンツ業界が家電やコンピュータの業界と連携して、つまり、ハード・ソフト一致のモデルで海外展開に力を入れてるんですよね。しかもそれを政府が強烈にバックアップしている。
櫻井さんはこう言います。「日本経済を高度経済成長から引っ張ってきた家電や自動車といった企業と、こうしたエンタテイメント企業に直接に架かっている橋はかぎりなく細いか、ない。」
「日本企業は、もっと本質的にエンタテイメント企業との距離を縮めるべきなのだ。」
全く同意。ソニーはCBSを買ってウォークマンを活かし、コロンビア映画を買ってテレビやDVDの戦略を描きました。松下はユニバーサルを買収し、島耕作もずいぶんがんばりました。東芝はビートルズやクイーンが所属した、そしてセックスピストルズがくだまいたEMIと商売しておったのです。
それが今や補償金を巡ってメーカーとコンテンツ業界が裁判で争っている。話になりません。「国がクールジャパン政策ですべきことは、まず、そこをつなげることなのではないだろうか。」
という櫻井さんの意見、御意。
ところでEMI/Sex Pistols、シドビシャス元気。
https://www.youtube.com/watch?v=YUanHzMDdAM
じゃ、日本はどうする。先日、東方神起や少女時代を擁するSMエンターテインメントの日本代表のかたが、対立路線じゃなくて、日韓連合で世界市場を取り込みに行くべきだという話をしていました。うん、勝ち組は見方がグローバルです。
櫻井さんも政策提言をしています。
「日本全体へのポップカルチャー教育がいまこそ必須」
「その重要性を教え、日本人の背中を押してくれているのは、海外にいる、無数の日本ファンたちだ。」
はい、ぼくもそれをやりたい。11年前、NPO「CANVAS」を設立してこれまで30万人の子どもたちにアニメ作り、音楽作り、ゲーム作りなどのワークショップを展開してきました。だけどもうそういうのは学校現場できちんとやってほしい。図画工作・音楽の時間倍増!ゆとってるヒマあるならガンガン創作せよ!
そして、安倍政権になってからポップカルチャー分科会議長を務め、ぼくが4月末に発した提言も、「みんな」力の発揮。提言はしたけれど、スルーされてしまいそうなので、もう一度、その部分を貼り付けておきます。
「世界中の子どもが知っているアニメもゲームも、海外の若者が憧れるファッションも、支えているのは消費者、ファンの愛情。クリエイター、キャラクター、事業者、そして何よりそれらを愛する国内と海外のファン。「みんな」の力を活かしたい。インターネットで多言語発信し、内外でイベントを開き、交流できる場や特区、さらには「聖地」を形作 るなど、みんなが「参加」して情報を発信する仕組みを構築しよう。政府主導ではなくて、みんな。」
櫻井さん、よろしく。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2013年10月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。