格付け会社のフィッチがアメリカの格付けを最上のAAAから格下げの方向で見直すと発表しました。ニューヨークの場が引けてからの発表のようです。これは市場に影響が出るかもしれません。
それより数時間前、トロントの金融関係者との定例交信は「アメリカの行方」に絞られました。今のところ、明日あさってには一定の「結論先送り」が行われるとみていますが、もはや市場はそれを良しとしていません。むしろ、人為的にアメリカのそして世界経済への波及があるとすればそれは政治という名の暴力でしかありません。
先の金融関係者との会話で盛り上がったのは「ティーパーティーは独立し、第3党となるべきである」という点でしょうか? 共和党はティーパーティーなしにして今後の道がないとしても共和党の政争の為に世界が揺れるというのは枝葉末節といわずして何といえましょうか?
その争いの対象となるオバマケアはすでに法制化され、その準備のため、多額の税金が投入されています。が、今、オバマ大統領率いる民主党が押し切ったとしても将来、共和党ないしティーパーティーが牛耳るアメリカの時代が出来たとき、そのプログラムの見直しをすることは必至ではないでしょうか? つまり、国民皆保険制度はあくまでも現時点の安心であり、未来永劫に続く保証は何処にもない、ということにも見えます。
これはアメリカの社会的未来を実に不安な形に陥れる結果となります。フィッチの格下げ見直しはそういう意味で正しい動きだと感じています。
一方、今後、起こりえるのがアメリカ国債の売却の加速化でしょうか? この数ヶ月、中国や日本はアメリカ国債を売り越してきたとされますが、仮に格下げ方向で見直すとなれば更にそのウェイトを下げざるを得なくなります(というより、正々堂々とアメリカ国債を売却する理由が立ったということになります)。
これはアメリカの国債市場において国債価格の下落を招く結果となります。
イェレン氏が予定通りFRB議長となった段階でこの国債価格の下落が進むようならばイェレン氏がもともとハト派で金融引き締めにはあまり熱心ではないとされるだけにそのベクトルに拍車をかけることになります。つまり、金融の量的緩和からの離脱時期は更に先延ばしになります。
ではこのような状態になった責任はティーパーティーの掻き回しが原因なのかと言えば私はオバマ大統領の力不足が如実に表れてきた結果とみています。月曜日の当地の新聞にはオバマ大統領が緑色のエプロンをしてサンドウィッチを作るのを手伝う写真が出ています。一方、先週のAPECではオバマ大統領は急遽欠席してケリー国務長官が代役を勤めるもののその役不足が指摘され、アメリカが「よたつく」のが目に見えるような状態になっています。
考えてみればついこの前まではこれが日本の姿であったのですが、世界の覇者としてのアメリカがこの状態であれば悪い意味での世界のブロック化が進む公算はあります。もはや世界におけるアメリカの影響力はより薄く、弱くなりつつあります。これはある意味、時代の変化と見ることも出来ます。
茶番を続けるアメリカではテレビチャンネルを回せばオバマ料理教室の番組が見られるということになりかねない事態だと思います。
債務上限問題という単体の問題よりもアメリカの戦略という意味でまことに憂慮すべき事態だと思います。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年10月16日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。