国家の諜報活動は両刃の剣 --- 岡本 裕明

アゴラ

ドイツのメルケル首相がオバマ大統領に盗聴の疑いで電話抗議したニュースは日本での取り上げ方こそ比較的小さいものでしたがこれは聞き流すわけにはいかないでしょう。メルケル首相が個人用で使っている携帯電話が何者かに盗聴されていた事実が確認され、それがアメリカだった、というのです。メルケル首相がオバマ大統領に直接電話でクレームするという行動まで出たのですからドイツ側としては相当の確証をもっての話だと思います。オバマ大統領はこれを否定しています。


これより少し前、アメリカ国家安全保障局がフランスでも盗聴し、日本にもその事実があったことが報道されています。フランスのオランド大統領はEUの首脳会議で対応を協議することになるとしています。

この話題にはポイントがいくつかあるかと思います。

まず、アメリカの諜報活動は想定以上に広い範囲にわたっていたこと
オバマ大統領はメルケル首相に盗聴の事実を否定していますが、これが真実だとしたらどう釈明するのか?
アメリカの諜報の真の目的はテロ撲滅だったがいまや、そのレベルを逸脱していないか?
スノーデン問題が生じた時、オバマ大統領を始め、アメリカ議会のあわてようは確かに度を越えていたかもしれないこと

ところでアメリカの盗聴や諜報には歴史があるのですが、今、オバマ大統領の足元がぐらつく中、この事件が思い出さないわけにはいかないでしょう。それはウォーターゲート事件。リチャードニクソン大統領が共和党大統領として在任中にワシントン、ウォーターゲートビルの民主党本部で盗聴事件が発覚し、これが最終的にニクソン大統領の辞任に繋がった事件です。後にも先にもアメリカ大統領が辞任したのはニクソンだけです。

諜報はそれがばれない状態で続いていることが前提ですが、ばれてしまうとニクソン元大統領のように後々非常に面倒くさいことになります。疑惑が残るもうひとつの有名なケースとして日本軍がハワイ真珠湾攻撃をすることが事前にアメリカに情報漏れしており、時の大統領、ルーズベルトは知っていたのに放置したとされる件でしょうか?

これは確証が出てきていませんが、あってもおかしくないストーリーでした。真珠湾にはアメリカ主要艦隊はおらず、ある意味、事前察知した上での非常に計画的に日本をおびき寄せる作戦ではないかという仮説にはうなずける部分もあります。更には太平洋戦争期になると日本軍はアメリカに完全にその情報を傍受され、アメリカの先手先手で日本が敗北を喫したことは多くの専門家が指摘しているところであります。

ところで日本にも戦前、陸軍中野学校という諜報部隊があり、相当優秀だったと伝えられています。日本が表向き諜報活動がなくなったのは確かGHQの指示だったと記憶しています。

その日本では今、国家安全保障会議設置関連法案と特定秘密保護法案の動きは見られますが、アメリカやイギリスを含む多くの国で見られる諜報活動とはほとんど無縁の状態でむしろスパイ天国ニッポンとも言われているのが現状です。

アメリカの諜報活動も行き過ぎるとオバマ大統領がニクソンの二の舞にならないとも限りません。アメリカには強い世論の批判が出てくることもやむを得ないかもしれません。オバマ大統領はどう対処するのか、かなり厳しい状況になる気がしております。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年10月25日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。