ローマ法王フランシスコは来年2月17日、18日の両日、特別枢機卿会議を開催する。同時に、2月22日には新しい枢機卿を任命するという。枢機卿会議の目的はフランシスコ法王が創設したバチカン法王庁の改革審議会の報告について世界の枢機卿と話し合い、具体的な改革を実行に移すのではないか、と見られている。
ローマ法王フランシスコは4月、8人の枢機卿から構成された提言グループを創設し、法王庁の改革<使徒憲章=Paster Bonusの改正>に取り組むことを明らかにした。
ちなみに、現在の枢機卿数は109人だ。最上限の120人に11人が不足している。ただし、来年2月前までには3人が80歳を迎えるため次期法王の選挙権を失う。そのため、フランシスコ法王は120人のフルメンバーを実現する為に新たに14人の枢機卿を任命する可能性がある。
8人の枢機卿の1人、マラディアガ枢機卿は「私たちは法王と全ての問題を話し合う。バチカン銀行(IOR)も当然、テーマに含まれる。私たちはまだ準備会議をしていないが、法王選出会(コンクラーベ)開催前の枢機卿会議で話題となったテーマについて話し合うことになる」と指摘している。同グループは10月、12月初め、そして来年2月の計3回の会議を終え、世界の全枢機卿の前に法王庁の改革案を提示し、了承を得るというプロセスではないか。
フランシスコ法王(ベルゴリオ枢機卿)は法王庁の改革を強く主張し、「福音を述べ伝えるためには、教会は(垣根から)飛び出さなければならない。自己中心的な教会はイエスを自身の目的のために利用し、イエスを外に出さない。これは病気だ。教会機関のさまざまな悪なる現象はそこに原因がある。この自己中心的、ナルシストのような教会の刷新が必要だ」と檄を飛ばしている。
バチカン改革の主要ポイントは、
①教会の近代化を決定した第2バチカン公会議(1962~65年)の継承とその履行だ。それに付け加えると、「聖職者の独身制」の廃止だ。フランシスコ法王は9月31日、法王庁のべネズエラ大使ピエトロ・パロリン大司教(58)をタルチジオ・ベルトーネ国務長官(78)の後任に任命したが、新長官は先日、べネズエラ日刊紙の質問に答え、「カトリック教会聖職者の独身制は教義ではなく、教会の伝統に過ぎない。だから見直しは可能だ」と述べた、というニュースが欧州メディアで大きく報道された。バチカンのナンバー2の高位聖職者が「独身制の見直し」を示唆したことはそれなりに意義があるが、新しいことではない。フランシスコ法王の前法王、べネディクト16世は独身制については「教会のドグマではない」と何度も強調している。新国務長官の発言で衝 撃的なのは、「教会の伝統に過ぎず、見直しも可能だ」という部分だろう。独身制の廃止は聖職者不足対策にもなる。
②バチカンの「中央集権」体制の見直しだ。具体的には、大陸司教会議など現場の声(聖職者)の重視だ。1人の法王が12億人の教会を指導することは無理だから、「権限の分割」が不可欠だ。第1バチカン公会議(1870年)の教理に基づき、「法王の不可誤謬性」が教義となったが、べネディクト16世は「ペテロの後継者ローマ法王の言動にも誤りがある」ことを実証してくれた。
③他宗派との対話促進だ。「イエスの弟子ペテロを継承するカトリック教会こそが唯一、普遍のキリスト教会」という「教会論」の見直しが重要だ。真理を独占していると主張し続ければ、他宗派との対話は成り立たない。これは真理の相対主義を意味しない。
フランシスコ法王は来年2月をメドに法王庁の本格的な改革に乗り出す考えだろう。それまで4カ月、改革反対派の高位聖職者から何らかの巻き返しがあるかもしれない。バチカンはいよいよ歴史的な時を迎えるわけだ。一度、改革が実行に移された暁には、世界に12億の信者を有するローマ・カトリック教会の内外で大きな影響が出てくることは必至だ。それだけに、フランシスコ法王の今後の動向が注目される。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年11月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。