アメリカ富裕層で人気ナンバー1の車種は、BMWでもベンツでもなく…… --- 安田 佐和子

アゴラ

子供の頃、お金持ちが保有する車といえばヤナセの黄色いステッカーが張ったBMWやメルセデス・ベンツでした。

ざっくり30年がたった今、ニューヨークに住んでいますとラッパーの間で「ビーマー」との愛称で親しまれるBMWはどちらかといえば大衆車に近い。リースだと月々3万円近くで乗れる、という手ごろ感が魅力なんでしょう。

では、アメリカ富裕層が選ぶ車はというと……。郵便番号別でみた1~8月の販売動向が教えてくれます。

自動車情報サイト大手エドマンズ・ドットコム、フォーブス誌、R・L・ポーク社の調査によりますと、全米住宅価格・中央値トップ25地区の1~8月新車販売台数で最も人気が高かったブランドはBMW、アウディ、ベンツ、レクサスでもなく……セダン「モデルS」。そう、現実世界のトニー・スタークとの誉れ高いイーロン・マスク率いるテスラの電気自動車(EV)でございます。

住宅価格の中央値レンジが430万~670万ドル(4億2140万円~6億5670万円)の25地区のうち、テスラは実に8地区でトップに輝きました。カリフォルニア州のポートラ・バレー、同州ロスアルトス・ヒルズ、同州アサートンなどでは、1~8月期の新車販売台数のシェアは2桁を記録。住宅価格・中央値で全米トップのアサートンでは、実に15.4%にも及んだんです。

全米住宅価格・中央値ランキング別、1~8月期新車販売動向に占めるテスラの割合はこちら

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カリフォルニア州と比較すると、ニューヨーク州でのシェアが低いことに気づかれましたか? NY州でのテスラの割合は良くて1%に乗せる程度で0.3%程度がザラなのに、なぜこうも西高東低なのか。NYが充電スタンドが決定的に不足しているだけじゃないんです。

EVであるテスラ購入者には7500ドル(73万5000円)の連邦税控除を与えられます。これがカリフォルニア州だと、2500ドル(24万5000円)の州税控除とセットになるんです。おまけに、テスラなら運転手1人でも渋滞回避をえらって設定されている相乗り車線で走行できるメリットまでついてくるんですよ。究極の車社会カリフォルニア州では魅力的な特典というワケ。

テスラがカリフォルニア州パロアルトに本社を構えているのも、地元アメリカ人富裕層の愛着をそそるのかもしれません。「モデル S」の価格は7万1000ドル(695万8000円)から。日本でも予約開始済みで、2014年春に納車予定なんですね。環境に配慮するリッチ層が公道でデビューさせると、憧れの人気車種として急上昇するのか注目です。

テスラに次ぐブランドはというと。

出ました!定番のメルセデス・ベンツです。米10月新車販売台数でも、半月に及ぶ政府機関の閉鎖にはお構いなし。前年同月比25.4%増の3万69台と過去最高を達成し、当然ながら米国高級車部門では王座を奪回してます。2位のBMWは4.2%増の2万7574台ですから、伸び率の差は圧倒的。1~8月の富裕者地区別では、特に中型セダンの「Eクラス」、クロスオーバー型「GLクラス」が多くランクインしてました。

全米住宅価格・中央値ベスト25地区で人気の車一覧は、こちら。

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健闘した車種はクライスラーの「ジープ・ラングラー」、BMW「3シリーズ」、フォードのピックアップ・トラック「Fシリーズ」でした。ピックアップトラックやジープが入るところが、アメリカらしいですね。日本車では、「レクサスRX」のみ順位に食い込んでました。2011年に東日本大震災が発生するまで米国新車販売台数で11年間トップに君臨したレクサス、巻き返しに期待したいです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年11月2日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。