内閣人事局関連法案 ~ 理想と現実の混在 --- 石川 和男

アゴラ

今臨時国会に提出することが予定されている国家公務員制度改革法案(正式名は「国家公務員法等の一部を改正する法律案」)の概要について、政府が作成した参考資料(全5頁)を見ながら、特に気付いた点に関して、実効性や効果・影響について考えていきたい。


資料1〔=幹部職員人事の一元管理等〕には、「職員の育成及び活用を府省横断的に行う」とあるが、これは幹部職員のみならず全職員に関することで、最も重要なことだ。殆どピンとこないが、この理想に向かって、是非とも邁進してもらいたい。現行では、採用後しばらく経てから府省間交流が行われる。採用時から府省横断的な人事を行うため、府省ごとの採用ではなく、府省横断一括採用にすべきとの意見もある。しかし、それは現実無視だろう。業務内容は府省ごとにあまりにも異なる。官庁に就職したい人は誰しも、一応、自分が就きたい公務の分野があるはずだ。

資料1の「幹部職(本府省の事務次官級・局長級・部長級)に係る適格性審査の実施、幹部候補者名簿の作成」については、事務次官級・局長級が200人、部長級が400人なので、総計600人規模の幹部人事となる。これは虚妄だ。600人もの適材適所をどうやって行うというのか。この数字が現実的なものであれば、かなりの毒にもかなりの薬にもなろうというものだが、600人は多過ぎる。だから、毒にも薬にもなり得ないと思う。

この点に関しては、資料2〔=幹部職員の任用に係るプロセス(イメージ)〕を見ると明らかである。最初に官房長官が「適格性審査」と「幹部候補者名簿(の作成)」を行い、最後に総理と官房長官が各大臣と「任免協議」を行うことになっている。この構想では、総理と官房長官は超人的な人たちでないといけない。実際には、各府省が事務的に提示してきた幹部人事評価の大半を追認することになるだろう。

資料3〔=内閣人事局〕と資料4〔=内閣人事局について(イメージ)〕は、新設される内閣人事局の設置趣旨や事務、体制が記されている。この新しい役所は100人規模になるそうだ。人事院、内閣府、総務省、財務省など人事関連業務を担っている役所から人員を集めることになるだろう。組織の一部改編となるので、人事異動を伴うことになる。御苦労な話だ。

内閣人事局構想が具体的に検討され始めた当初2008年頃では、人事院、総務省、財務省などに分散している人事政策関連権限を内閣人事局に集約することが理想として掲げられていた。しかし、二度の政権交代を経るなど様々な紆余曲折の末、資料4のような形で落ち着くことになる。今の時点ではこれで十分であり、しばらくの間は撃ち方止めとすべきだ。本件は“改革疲れ”に見える。権限移動はそんな容易なことではない。

今回の関連法案で注目すべきは、資料5〔=内閣総理大臣補佐官・大臣補佐官〕にある「大臣補佐官」制度の創設だ。官庁の頂点における官民交流の風穴であり、民間人の登用が何ら違和感なく行われるような慣習になっていくことを期待したい。現行でも「内閣参与」制度があるが、実質的にはこれを各府省にまで正式に拡大する訳だ。年次を問わずに、他省庁からの若い年次の職員を登用するようになれば、大きな風穴になるだろう。

<資料1>


<資料2>


<資料3>

<資料4>

<資料5>

(出所:内閣官房)
 


編集部より:この記事は石川和男氏のブログ「霞が関政策総研ブログ by 石川和男」2013年11月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった石川氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は霞が関政策総研ブログ by 石川和男をご覧ください。