共産党相模原市議団の大田浩氏が共産党に離党届を提出した。
どうも政治信条が合わなくなったとか党執行部のやり方に不満があるとか通常の理由ではないらしい。その理由を聞いて目を疑った。党への多額の寄付やカンパを事実上強制され生活にきたしているというのが離党の理由だというのだ。
大田氏によれば「納付金」は月約48万円(税引き後)の市議報酬の内、党費と党への寄付金として毎月約16万円。8月と12月には「夏季・冬季カンパ」と称して各約17万円、年2回のボーナス時にも各約40万円を納めており、年間総額360万円に上るとのことだ。
さらに国政選挙など際にも臨時カンパを求められるとし、これらの「納付」が事実上の強制であったとしている。
これらが事実だとすると手元にはどの程度のお金が残るのか。ましてや政治活動にかかるお金を考えれば家計は火の車だろう。大田市議は昨年11月に結婚されたそうで、奥さんの収入があるとしても子供ができれば養っていくのは大変な苦労だ。
これまでブラック企業の実態を舌鋒鋭く追及してきた共産党だが自分たちが党所属の議員を食い殺すブラック政党になっていた可能性がある。
さらに別の側面からも興味深い告発だ。
共産党といえば政党交付金を受け取らない唯一の党として有名である。党のホームページによればその活動資金は党費、「しんぶん赤旗」などの事業収入、個人からの募金など党財政を全部自前で賄っているという。独自の収益モデルを確立し自分たちで一切の党財政を賄っているため、誰に配慮することもなく与党にも政治システムそのものにも厳しい態度で望めるというのが共産党の強みでもあるわけだ。
これまでブラック企業追及や偽メール問題、外務省の不正などを厳しく追及する共産党を私たちは国会の場で見てきた。
しかし、ちょっと待って欲しい。今回の大田氏の告発が事実だとすれば、共産党は議員を迂回させて税金の恩恵にあずかってきたことになる。議員の歳費、つまり給料の源は税金だからだ。
地方議員が公認料や党費を所属政党に月いくらかのお金を支払うというのは筆者も国会議員の秘書時代に聞いたことはある。しかし、このカンパというのは聞いたことがない。しかも額が明らかに突出している。相模の市議会議員でこれだけのカンパをとられているのだ。ホームページで確認すると共産党所属の地方議員は2,701名いるという。仮にこの「相模モデル」でこれだけの数の議員がを党に「納付」しているとすればカンパだけでも年間30億を超える。地方議員は4年間の任期なので安定的に資金が入ってくるという点も見逃せない。
もちろん地方議員によって歳費(給料)は様々だから一概には言えないがこれだけの税金が議員を迂回して流れているわけだ。
これは国民に対する重大な背任行為だ。しかも、内部を知っている人間でなければ知ることができない。
さらに悪質なのは、各議員を通じて迂回させているから実質、内部でお金を回しているようにしか見えない。企業献金でも団体献金でもない。国からお金をもらっているようにも見えないのだ。
「国や企業・団体からお金はもらっていないから厳しい姿勢で様々なことを糾弾できる」というポジションを維持することができるわけだ。
しかし実態は議員を通じて年間かなりの額のお金を税金からかすめ取っていたことになる。この額を追求し、どれだけの税金が共産党に「納付」されているのかしっかりと調べるべきだ。政党交付金は所属議員の数に応じて額が決まる。数という点だけ見れば国民の支持数に応じて国庫から政治活動費が払われていることになる。まだこちらの方が考えとしてはまともだ。
この問題を通じて見えてくるのは野党をチェックする機能が乏しいということである。政権を担っている与党は厳しい目で野党にも国民にもマスコミにもチェックされる。その評価は次の選挙結果として如実に表れてくる。
ところが肝心の野党をチェックすることはなかなか難しい。実は、野党をチェックする機能をしくみ化することが政治全体の劣化を止め、国民参加の新しい政治モデルを作ることになるのではないかと思っている。
佐藤 正幸
World Review通信アフリカ情報局 局長
アフリカ料理研究家、元内閣府大臣政務官秘書、衆議院議員秘書
Twitter@Tetsutochi
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