「マル研」が放つスマートテレビ --- 中村 伊知哉

アゴラ
「マルチスクリーン型放送研究会」、通称マル研。在阪のテレビ局が中心となったコンソーシアムで、スマートテレビの実証実験を試みています。ぼくは顧問を務めています。地デジの電波に通信技術であるIP(インターネットプロトコル)を乗せて、テレビ画面やタブレット、スマホなどマルチの画面を同時に管理する日本型の放送・通信融合モデル、日本型のスマートテレビモデルを大阪発で作ろうというものです。これまで何度かハッパかけました。これは昨年4月の総会にて。
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2012/08/blog-post_30.html

その後、動きは全国に広がり、11月の放送展InterBEE2012@幕張では、12テレビ局、15番組が参加しました。

IPDC @InterBEE2012
■IPDC @InterBEE2012 放送展 InterBEE2012 @幕張。 ぼくが会長を務める IPDC フォーラムとしてブースを出しているので今回は出展者として参加しました。 地デジ網の整備が完成したとはいえ、デジタルならではの放送サービスは未だ姿が定ま...

さて、そして2013年、

デジタルサイネージジャパン(DSJ)と併催した

放送・通信融合展IMCでのブース展示です。
でテレビ画面とスマホの両方を操作。

いよいよ全国に広がりつつあります

前回はテレビ画面→タブレットの情報連動が
クローズアップされていましたが
今回はスマホでの操作が焦点となっていました
スマホで番組自体を保存したり、
共感=イイね!ボタンでソーシャル視聴したり。

スマホには
見ているテレビ番組のCM
勝手にどんどん溜まっていき
おお、INOBUNのクーポンが入ってくるのか!
と京都出身者として強く反応。
スマホに蓄積されたCMから
ゲームやクーポンに飛んだり。
CM
を溜めたり見たりする
インセンティブが仕込まれています。


テレビを見ると
自然にポイントが貯まっていく。
見てたらトクをする。
大阪的なしかけでんな。
でも、これ、とても大きなヒントじゃないですか?

スマホがリモコンになるアプリ。
リモコンを立ち上げると同時に
マル研アプリも立ち上がる。

ユーザをアプリにどう誘導するか、
がスマホ関係者の悩みの種ですが、
リモコンなら身近。

そこからマル研に引き寄せる。
考えましたね。


PCで入力すると
すぐ地上波でスマホ情報が届くソフト。

ローカル局のナマ番組でも簡単にダブルスクリーンを使えるようにするしかけ。

番組制作の敷居をうんと低くして普及を目指します。

こうしてスマートテレビの実像がほんのり見えてきました。同時に、DSJIMCの会場では、4Kの展示が目立ちました。総務省が4K/8Kに力を入れていることもあり、双方に期待が高まるとともに、同時並行であることへの混乱もあります。

ぼくも問題提起をしたことがあります。
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2013/03/k.html

80年代のニューメディアは、ハイビジョンによる高精細化とCATV・衛星の多チャンネル化がテーマでした。90年代のマルチメディアは、PCとケータイ、インターネットと地デジによるデジタル化がテーマでした。

その次の動きとして、マルチスクリーンとクラウドネットワークとソーシャルメディアがやって来ました。デジタルサイネージも、スマートテレビも、その一味です。特に日本のデジタルサイネージは電子看板から参加型のネットワークメディアに進化していて、タブレット向け情報配信やスマートテレビとオーバーラップしつつあります。
ようやく、新しいステージが見えました。

しかし、そこに4K/8Kが登場したのです。日本は世界に先駆けてその放送が始まります。マルチスクリーン、が見えたところで、もう次のステージが始まるのでしょうか。
DSJ会場にて、総務省の南俊行官房審議官にぶつけてみたところ、「4K8Kとスマートテレビは、バラバラではなく一体として政策対応する」とのこと。スマートテレビによるビジネスモデル作りと、4K8Kのマーケット開拓を両にらみで考える。舵取りは難しいと思いますが、放送は通信と違って政策対応が市場を左右するので、しかと頼みます。

4K8Kの市場は放送よりサイネージのような業務用が先かもしれないね」。そうだと思います。80年代、放送メディアとして期待されていたハイビジョンも、当初は博物館や美術館などのスタンドアロン利用で広がっていきました。当時は放送=郵政省、施設=通産省の戦争があったのですが、今はそんなことはないので、うまいことやっていただきたいものです。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2013年11月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。