失点続きのオバマケア、共和党は世論調査でリード奪回 --- 安田 佐和子

アゴラ

オバマ政権は27日、中小企業へのHealthcare.govを通じた保険提供につき、1年先送りを決定しました。中小企業が「SHOP(ショップ)」と呼ばれるオンラインの保険取引所を通じ購入するのは、2014年11月まで待たねばなりません。50人以下の中小企業は保険加入で最大50%の減税を受ける利点があったので、手っ取り早くオンラインで済ませたかったことでしょう。紙面での受付は10月1日から開始済みですから、減税の恩恵に預かる余地は大いに残ってますけどね。政権側は変更につき帰省や家族の晩餐の準備で忙しくなるサンクスギビングデーの前日、27日に発表しています。

ツチがついたのは、これが初めてではありません。正社員が50名以下の中小企業に対する保険加入義務付けそのものも、2014年からの試行を1年後ろ倒ししていたんです。あのときは、独立記念日の2日前にあたる7月2日を選びました。

オバマ米大統領の肝煎りで2010年3月に成立した医療保険制度改革案。2014年1月から個人の義務付けを含む本格始動にあたって、オンラインの保険取引所「エクスチェンジ」自体も障害で立ち遅れ、失点が相次いでおります。11月30日に設定した「エクスチェンジ」の通常稼働のメドも、一体どうなることやら。現時点での「エクスチェンジ」を通じた保険加入者は、2014年3月まつの登録者数の目標700万人を大きく下回る5万人程度という体たらくです。

問題は山積みで、改正と遅延を声高に叫ぶ共和党にはおいしい敵失。

(出所 : Washington Post)

もうひとつ忘れてはいけない問題点として、オバマケアの基準に満たないとして解約されるはずだった既契約保険の取り扱いが挙げられます。

米下院では11月15日、過半数を握る共和党のフレッド・アプトン議員(ミシガン州)が起草した法案「Keep You Plan(既契約保険維持法案)」を261対157で可決しました。同案には、1)契約済み保険の1年間継続する、2)新たに販売する--ことなどを盛り込んでおります。オバマ米大統領も最低基準を満たさない既契約の保険の継続を提案したものの、基準外の保険商品を新たに販売する共和党案に39人の民主党議員が支持し、政権にとって痛手となっていました。

政府機関が閉鎖していた10月前半、2014年に中間選挙を控え共和党の支持率が過去最低を更新したのは記憶に新しいですよね。

1ヵ月前の逆をいくように、今度は共和党がオバマ政権の失点に助けられ政府機関の閉鎖での汚名を挽回しています。CNNと調査機関ORCインターナショナルが18-20日に実施した世論調査では、仮にいま投票するならどちらの党かとの質問に対し「民主党」との回答が有権者のうち47%と1ヵ月前の50%から低下。反対に「共和党」との回答は42%から49%へ大幅上昇し民主党を上回っていました。

ギャラップが18~24日に行った最新の週間世論調査では、オバマ大統領を評価するとの回答は40%。オバマケア導入前の9月の45%から低下しただけでなく、債務上限引き上げ交渉がこう着し格付け会社S&Pによる格下げを引き起こした2011年夏以来の最低に並びました。

人の心はうつろいやすいものです。

2010年の中間選挙を控えた、選挙から1年前の2009年11月時点の世論調査をみてみましょう。CNN/ORCインターナショナルによると、いま投票するならとの質問につき「民主党」との回答は50%と、「共和党」との回答44%を6ポイントも上回っていたんです。ふたを開けてみると、63議席をを獲得し民主党から米下院での多数派を奪ったのは、共和党でした。今のねじれ国会は、ここから始まったんです。

超党派の予算委員会は、12月13日までに財政協議の合意に到達する予定です。1月15日の暫定予算切れ前に、両党が歩み寄るきっかけをつかめるか。動向次第で、世論は再び風見鶏のごとく向きを変えるのでしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年11月28日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。