橋下さん、大阪のおっちゃん、おばちゃんの懐に飛び込みなはれ

大西 宏
橋下人気が地元でも色あせ始めていることを感じます。というか、橋下市長のツイッター弾もすっかりなりを潜め、たまにテレビに登場する姿はあっても、見聞きする機会がぐんと少なくなってしまいました。朝日新聞が11月に行った世論調査で、かつて知事時代には80%近かった支持率も今では49%に落ち、大阪都構想についても、はじめて賛成32%、反対37%と反対が上回りました。既得権益を持つ側からのネガティブキャンペーンが強く、発信力を失うと当然だろうということになります。

息切れでしょうか。ビートたけしに「落ち目のアイドル」と揶揄されたそうですが、大阪ではまったく人気がなく、イメージも合っていない石原慎太郎前都知事と組んでしまったこと、正しいかどうかではなく、余計としかいいようのない従軍慰安婦発言でダメージを受け、それも影響して堺市市長選で敗北したとなると自らが招いた状況です。

しかし、地元にいて感じるのは、まだやっと大阪を立ち直らせてくれそうだという橋下市長への淡い期待は消え立ちておらず、なんとか立ち直って欲しいという声なき声の根強さです。この点は、他の地域、とくに首都圏では感じることのできないことだと思います。

半数近くの人がまだ橋下市長を支持し、松井知事の支持率は44%、しかしこのままではさらに支持率低下に歯止めがからなくなってくることは言わずもがなで、橋下市長、また大阪維新の会が新しい展開を生み出せるかどうかにかかっているのでしょう。

しかも大阪都構想に反対するだけでまともなビジョンを対案として示せない自民党や民主党は、議会で席はあってもまったく存在理由を失ったままの状態であることを考えると、流れを変える可能性が消えたわけではありません。

しかし時間に余裕はありません。政治にもマーケティングが求められますが、マーケティング戦略の立て直しを急ぐことが迫られているのでしょう。

もっとも重要だと思うのは、啓蒙者の立場で「大阪都構想」を浸透させるということから、地元と一緒に作り上げていく「大阪都構想」という運動の質の転換です。もうそろそろそちらに転換していく段階にはいっているのではないでしょうか。しかし、そういったアプローチをあまり感じることができません。

地方都市なら、経済に占める公共事業の率が高いのですが、大阪は府にしても、市にしても、公共事業とは無縁な中小企業、中小商店が圧倒的に多く、しかも集積しています。
普段は国政にしても、府政や市政にしても、政治とは縁がないという組織されていない人たちです。そういった人たちとどう絆をつくるのかが鍵になってくると思うのですが、そういった人たちとの交流を広げ深める努力を橋下市長や大阪維新の会は積極的には行っていないのです。

理屈よりも信頼や共感、また絆をつくることは国政ではなかなか難しいでしょうが、地域では可能なはずです。橋下市長は、非公開の場で「1年生議員の地元活動が弱すぎるのではないか。このままではダメだ」と同じことを感じておられるようですが、まったくその通りです。

ただ個々の議員に考えさせ、行動を促し、動かないと不満を言っていてもなにも始まりません。大きな運動の流れを創りだすのは大阪維新の会の役割で、それをそった動きを指示するのは橋下市長です。議員を動かすのはリーダーです。

住民投票まで残りはわずか一年です。この歳末にも商店街、また駅前に議員総出で繰り出して、市民、府民の声を直接聴くことからでもスタートは切れます。ただただ時の流れに身を任せていては人々の心は動きません。

戦後の大阪復興に際して、霞ヶ関の薄く広くの復興では駄目だと、地元に働きかけ、独自の復興戦略を動かした阪急電鉄創始者小林一三から学んでみてはどうかと感じます。

政治の構想を描くブレーンはいても、大阪維新の会には、大衆運動の仕掛け人、プロモーターがいないのでしょうか。そうなら橋下さん自らが、「大阪のおっちゃん、おばちゃんの懐に飛び込んでしっかり絆をつくりなはれ」です。