エデュテインメント(Edutainment)という言葉がある。Education(教育)とEntertainment(娯楽)を掛け合わせた言葉で、娯楽に教育的要素を盛り込んだり、教育に娯楽的要素を盛り込むことで、楽しみながらいつの間にか学んでしまうといった手法、考え方だ。アメリカやイギリスでは理論化され、政府や公共団体の各種のプログラムとして応用されているが、日本でも企業を中心に様々な商品サービスが展開されている。さらには、実は昔ながらの遊びもエデュテインメントの要素が強いものも多い。そこで、幼児から小学生くらいまでを対象としたお薦めのエデュテインメント10選を挙げてみたい。
1. 知育ブロック
レゴをはじめとする様々な知育ブロックが出ている。私の家にあったおもちゃはレゴくらいだったが、兄や友人たちと一緒になっていろんなものを創造して作った。何かをデザインしたり、空間概念を把握したりする力を養うのに大いに役立ったと思っている。最近のお薦めの知育ブロックについては以前の記事で紹介した通り。(レゴだけじゃない知育ブロック最前線)
2. パズル、粘土
パズルや粘土にも知育ブロックと似た効用がある。パズルは徐々にピース数を上げていくとよいが、公文のシリーズが適性年齢に合わせてレベルを上げられるようになっているし、箱に入れて管理しやすいのでお薦めだ。粘土は知育ブロックもそうなのだが、図鑑などで好きになった乗り物や生き物、恐竜などを造ってみている。
3. 学習マンガ
家に唯一あったマンガが学習マンガで、マンガ日本の歴史や世界の歴史を誕生日の度に買ってもらい全巻そろえた。ゲームや他のマンガなど楽しいものはいっさいなかったので、ひたすら読みまくって歴史の流れや人物名だけでなく、台詞まで覚えてしまった。歴史が好きで得意になったことは言うまでもない。この原体験をもとに、それこそ日本が誇るEdutainmentである「マンガをステップにした学び」について着目し、マンガ勉強法という本にまとめた。
4. 図鑑
以前の記事「最近の図鑑がすごい件」で書いたが、最近は図鑑のエンターテインメント性がかなり高くなっている。特に講談社の動く図鑑ムーブはど迫力のDVDと本の図鑑が連動しており、楽しみながらいつの間にか学べるEdutainmentの見本と言ってよいだろう。
5. 博物館
図鑑で知識を蓄えたら実物に触れるのが一番。動物園や水族館ももちろんよいが、博物館もかなり楽しめるうえに学びの機会がつまっている。特に上野の国立科学博物館はお薦めだ。恐竜の化石や象、シャチといった巨大動物の骨、カブトムシやチョウチョの標本などこれでもかというくらい展示されている。図鑑の知識と照らし合わせると、DVD→本→実物→本で深く調べるというループが加速、深化する。もちろん、動物園や水族館でも同様にエデュテインメントが可能だ。
6. 自然探検、虫探し、天体観測
実物という意味では、博物館や動物園よりも、自然のなかに生きる生き物を自分で見つけることほど楽しいことはない。私は都会のど真ん中と思われている渋谷区在住だが、子どもたちと一緒に徒歩や自転車でいろんな公園に探検、虫探しに繰り出している。蝶々やダンゴムシやミミズ、蟻、カナブンなどはもちろん、珍しくて気持ちの悪いゲジやコウガイビルなども発見し、写真を撮って図鑑で調べたり、それでもなかったらインターネットで一緒に調べたりしている。カブトムシ探しなんかは、親のほうがもっと楽しんでいるくらいだ。天体観測はまだ望遠鏡までは進んでないが、毎日月の満ち欠けを確認したり、プラネタリウムに行ったりして楽しんでいる。
7. カード、トランプ、かるた
博物館や水族館などに行くと、お土産コーナーによく関連のカードが売ってある。恐竜や動物、魚などで、裏に解説などが書いてあり、図鑑をカードにしたようなイメージだ。うちではこれを、大きい方が勝ちなどのルールをつくってカードゲームのようにして遊ぶ。動物などの名前も覚えられるし、数字の概念にも親しめる。もちろん、トランプも数字に強くなるのによいし、神経衰弱などは暗記力や集中力を鍛えるのに役立つ。カルタは語彙力や瞬発力が磨かれる。
8. しりとり
語彙力といえば、うちでは今しりとりにはまってる。これまで覚えた生き物や国名などを駆使して遊んでおり、親が驚くような言葉を出してくることもある。逆に少し難しい言葉を親が言ってその意味を教えてあげることで、新しい語彙を増やしたりしている。
9. なぞなぞ、クイズ
しりとり同様、何の道具もいらず、親子の会話だけで成り立つエデュテインメント。「パンはパンでも固くて食べられないパンはなーんだ?」みたいなやつですね。親が考えて子どもに答えてもらうのもよいが、子どもにも問題を考えさせて、交互で問題を出し合うのがもっとよい。いわゆるなぞなぞではなく、普通の知識を問うクイズをしたりもする。電車や自転車に乗っている移動時間などによくやっている遊びだ。
10. 知育ゲーム
最後にゲームも挙げておきたい。率直なところ、刺激が強く受動的になりやすいゲームはどちらかというと慎重であるべきであるとは思う。ただし、そのエンタメ性の強さをうまく学びに活用することができれば、かなりの効果を発揮する可能性はある。個人的には信長の野望などは勉強になったし、英単語の暗記もゲーム性を取り入れたアプリを使ったほうが楽しくできた。DSの脳トレなども楽しく勉強できる。今後、エデュテインメントとして伸びるのはこの分野であることは間違いない。ゲームのもつリスクを抑え、教育性の弱いエンタメゲームに流れないような仕組みをつくれば大いに可能性がある。
以上、子どもの学びを加速するエデュテインメント10選をまとめてみた。他にも将棋、オセロ、囲碁や、テレビや映画にもエデュテインメントになるものがあるが、ここでは省略した。学びが最も効果を発揮するのは、楽しくて楽しくて食べるのも忘れてしまうくらい集中してしまうときだ。何かを知ること、何かが分かること、何かを創造することがめちゃくちゃ楽しいという感覚を全身に染み込ませることこそ、子ども時代にやっておくべきことなんじゃないかと思う。
学びのエバンジェリスト
本山勝寛
http://d.hatena.ne.jp/theternal/
「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。