前から噂はされていたが、ついにRolling Stonesの来日が発表された。たまたま出かけた表参道では広告号外まで配られていた。中年の私は喜んで手にとったのだが、若い人はどうだっただろう。
ファンとして嬉しいが、やや意地悪に言うと、ロックの大御所の来日って、今や高齢者からの年金回収ビジネスじゃないか。徒然なるままに書くことにしよう。
「財布が持ちませんな」
先輩や同世代とこんな話題になる。この1年くらい、ロックの大御所の来日公演ラッシュなのだ。私も今年は、Aerosmith(B’zとのジョイントだった)、KISS、Paul McCartneyに行った。他にも、BON JOVIも、Huey Lewis & The Newsも、Ringo Starrもやってきた。VAN HALENもYESもASIAも、BRYAN ADAMSもやってきた。Boz Scaggsだってやってきた。
来年は、Rolling Stonesの他、Eric Clapton、Jeff Beck、Deep Purple、TOTOがやってくる。
嬉しい悲鳴だが、ここまで集中したら悲鳴である。しかし、「これで最後かもしれない」と思ってしまい、思わず行ってしまう。
ただ、チケットは、決して安くない。今回のRolling StonesはS 席 18,000円、A 席 16,000円、B 席 14,000円、そしてステージ花道を囲む限定席が80,000円である。B席のチケット代だけで、昔、通っていた下北沢のライブハウスに7回くらい行けそうだ。
ラインナップもそうだし、チケット代からしても、老人の、老人による、老人のためのロックになってしまっている。
私が行ったライブも、Paul McCartney>>>>>>>>KISS>>>Aerosmithの順に、観客の年齢層が高かったのが印象的だった。KISSのライブでは、一緒に行った方によるとトイレでは加齢臭がした。隣の席の人も美魔女、美熟女を超えて、普通におばさんだった。Paul McCartneyのライブでは、髪型が波平さんの人がたくさんいた(ふねさんはさすがに少なかったが)。
よく、この手のキャリアが長いアーチストのライブレポートでは「往年の名曲から、最新アルバムの曲まで新旧織り交ぜたセットリストで、会場に集まった世代をこえた老若男女のファンが熱狂した」なんていう紹介文がテンプレート化されているが、そんなのは嘘で、実際は、「昔の曲で中高年男女が熱狂した」が正しい。先日のPaul McCartneyは実に2時間40分、37曲を演奏したが、新曲は4曲で、ビートルズナンバーが24曲、他はWingsなどの曲で要するに、9割が古くからの曲だった。
そういうわけで、ロックの大御所の来日公演は、「もう最後かもしれない(アーチストも、そして自分も)」と思わせ、お金が払える中高年の財布を狙った集金ビジネスとなっていないだろうか。
「若者のロック離れ」なんて、また適当なことが言われるわけだけど、要するにそれは「お金の若者離れ」なのである。若者も夏フェスなどにはちゃんとお金をかけているのだが。
やや真面目な話をするならば、マネタイズの一つの答として、「払ってくれる層から深く取る」という鬼畜でありつつも、合理的な手法がそこには確立されていると私は見ている。
今回のRolling Stonesの来日は8年ぶりで、東京ドームにて3回のライブが予定されている。元メンバーのミック・テイラーも参加する。すでに、抽選販売の受付などが始まっている。私も申し込んだ。きっと、40代以上の、主に60代、70代のファンたちが熱狂するのだろう。
「俺も、ミックやキースと一緒に、転がり続けよう」なんて自分語りを始めるのだろうが、年金を集金に来ていることを、ちゃんと直視しなくてはならない。