今週のメルマガの前半部の紹介です。
新卒採用時に、大学の成績を重視する大企業が増えつつあります。
といってもまだまだいくつかの企業が先行している段階にすぎませんが、筆者も以前からたびたび言及してきたように、これからこの動きは間違いなく加速するでしょう。というわけで、今回は、学業が重視されるようになった後の就職戦線および、組織に求められる人材像について考えてみたいと思います。
なぜ今まで成績が重視されなかったのか
たとえば、あなたがこれからある土地に引っ越すとしましょう。そこに骨をうずめる予定であり、終の棲家を探す場合、恐らくあなたは設計段階からしっかりと関わって、自分のライフスタイルに合った住宅を設計しようとするでしょう。家族は何人に増えそうだから個室はいくつ必要で、家事を考えるとキッチンや洗濯機といった動線が短くてつながっていて、老後のことを考えて段差や高低差の少ない家がいいetc……
死ぬまでそこで過ごす家なら、出来るだけ自分の嗜好に合った究極の暮らしやすい家をゼロから作るのが合理的ですからね。
一方で、その土地にいるのがせいぜい数年間くらいだとすればどうでしょう。きっと売りに出されている中から適当な中古住宅を選ぶことでしょう。独身だったら、家具や電化製品もセットのマンスリーマンションなんかもおススメですね。もちろん他人様が作った家ですから住み心地は100点満点じゃないでしょうが、数年間の快適さのために建築士にあれこれ注文する人はまずいないはず。
採用活動もこれとまったく同じ理屈ですね。企業がその人を定年まで雇い続けることを前提とした場合、出来るだけ若くて伸び代のある人材を採って、ゼロから自社に特化した形にデザインするのが合理的です。逆に数年でばんばん転職される、あるいはそもそも企業側で何十年も雇うことを前提としていない場合は、最初から一定のスキルを持つ人材を採った方が合理的です。
もちろん日本企業は前者なわけで「出来るだけ若くて伸び代がある=偏差値の高い大学の新卒」という人材を争って採用してきたわけです。これが新卒一括採用の背景ですね。ゼロから自社のカラーに染める以上、もちろん大学での成績なんて確認しません。成績表の提出も(研究職などを除けば)内定を出した後です。要するに、終身雇用が日本の大学のレジャーランド化の根幹にあったわけです。
そういう視点からみれば、一部の大企業が、大学の成績を重視し始めたことの意味は明らかでしょう。
「ゼロ状態の人材をうちで採って育てても途中で転職されてしまう」
あるいは
「もはやゼロから育てる余裕などないし、65歳まで雇い続ける自信もない」か。
いずれにせよ、そうした企業は終身雇用から身を引き始めたということです。もはや終身雇用の時代ではない的なことをぶち上げるトップや人事役員は今までも多かったですが、こうして具体的なアクションが出てきたことは、それなりに意義のあることだと言えるでしょう。
※AO入試やゆとり教育のせいで学生の質が下がっているためだという意見もありますが、以前述べたように、入試時の偏差値50台のAPUの評価が伸びている点を考えれば、もっと深い構造的変化が起きつつあることは明らかでしょう。
以降、
没落する体育会系
日本企業が求める新たな人材モデル、それは……
編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2013年12月11日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。