日本ビールは世界の巨大合従連衡に抗しきれるか

アゴラ編集部

まだまだ寒い季節が続きます。お酒は飲みますか。当方、ホッピーが好きなので、最初は「とりあえずビール」で生ビールを一杯飲み、その後はホッピーか焼酎のお湯割り、というパターンが多いです。寒くても最初はビールで喉を潤したい。オッサン世代の希望でしょうか。あ、あと個人的に好きなビールは、サッポロの黒ラベルです。


しかし、若い世代の酒離れが影響しているのか、それとも景気が悪いからか、全体的に酒類の市場はここ10年で漸減傾向に歯止めがかかりません。とりわけビールの出荷量は15年間でほぼ半分強になっている。ちょうど発泡酒が出始めたころなので、発泡酒がビールの市場を蚕食し、さらに10年くらい前からは「新ジャンル」と呼ばれる発泡系の酒類が登場。価格の安さや飲みやすさなどもあり、すでにビールの出荷量は、発泡酒と新ジャンルを合わせた量に並ばれています。

消費税増税などで減税されてきたウィスキーや日本酒に比べ、ビールにかかる酒税は高止まりになっているんだが、発泡酒や新ジャンルの酒税もむしろ増税されています。酒税収入における割合が、ビールが45%前後。発泡酒と新ジャンルを合わせると2/3にもなります。そのせいか、財務省は酒税の中でもビールには特別のこだわりがあるようでなかなか下げません。

一方、発泡酒や新ジャンルの低価格化と同時に、高級志向のいわゆる「プレミアムビール」が好調のようです。まずはサントリーとサッポロが出し、それを眺めていたキリンやアサヒも新製品を出して追随し始めています。2月17日には、ビール大手4社から2013年12月期通期の連結決算が出され、サントリーとアサヒが過去最高を記録。アサヒは「スーパードライプレミアム」が売れているらしい。ビールの売上げだけが影響したんじゃないんだが、キリンとサッポロが伸び悩む状況になっています。キリンの「グランドキリン」のほうは、同ブランドでカニバって伸び悩んだようです。

ビールなど発泡酒類では、安いものと高級っぽいものの二極化が進んでいるんでしょう。しかし、プレミアムビールの伸びシロは、そう大きくはない。大手の参入で市場が飽和してくれば、かなり激烈な争いが起き、遠からず脱落するものと生き残るものに分かれるんだと思います。さらに4月の消費税増税で、大衆消費がどうなるか微妙でしょう。

国内市場の拡大が望めない以上、世界へ目を転じなければなりません。日本のビール市場は、米国の1/5、中国の1/8、というデータもあります。サントリーが米国ビームを買収したり、アサヒが中国進出に本腰を入れ始めたり、キリンがオーストラリアの飲料メーカーへ食指を伸ばしたりした昨今のM&Aや業務提携の動きは、こうした背景から自然なものでしょう。

しかし世界をみれば、ビールの巨大メーカー、ガリバーはアサヒやキリンどころの規模ではありません。米国バドワイザーのアンハイザー・ブッシュを買収したベルギーのインベブは世界のビールのシェアが25%。これまた米国のミラーを買収した英国のSABミラーやオランダのハイネケン、ベルギーのカールスバーグの4社の「4強」で世界市場の半分以上になります。5位が中国の青島ビール。日本のビールメーカーは世界で言えば8位以下。もともと酒類はドメスティックなものであり、各国のユーザーの嗜好に大きく影響されます。日本の製品を現地で作っても受け入れてもらえないでしょう。日本市場に魅力はなさそうなんだが、ヘタをすれば逆にM&Aされかねません。

国内のビールメーカーで言えば、アサヒがついに時価総額でキリンを抜いたそうです。スーパードライの大ヒット以降、両者の拮抗状態が長く続いています。アサヒには、二本目の柱がなかなか育たない、という弱点がある一方、キリンにしても飽和しつつある市場で、二つのブランドが食い合ったりしている。2010年に破談になったキリンとサントリーの統合計画が、何年かたって酒席での残念話のネタにならないように気をつけてほしいもんです。

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アゴラ編集部:石田 雅彦