クリックや検索をした程度で寄付した気にならないでほしい

松本 孝行

Yahoo!が3月11日に「3.11」と検索すると10円を寄付する、という形のチャリティー企画を行うそうです。もうすぐ東日本大震災が起こった3月11日ということもあって、チャリティーの一つの形として面白いと思います。
ヤフーで「3.11」を検索すると10円寄付、3月11日にチャリティ企画

他にも東日本大震災だけではなく、途上国支援や紛争地域の地雷除去などのチャリティー企画として、クリックをすることで寄付できるというシステムを作っている会社や団体もあります。手軽にできる寄付として、多くの人がに受け入れられており、クリックする人も少なくありません。

しかしクリックや検索をしてもあなたは寄付したことにはならないのです。


この検索による寄付やクリックによる寄付は、本来であればクリックや検索をしなくても、寄付自体は行われるものです。なぜならこういった寄付は直接的には企業が行っている寄付だからです。Yahoo!の3.11検索寄付を例に取れば、検索せずにYahoo!が寄付することも可能です。しかし話題性や多くの人を巻き込むために、チャリティー企画として検索寄付を行っています。

ですから間接的には寄付をしているような気がしますが、あえてクリックや検索を経由しないでも、寄付をすることだって企業側はできたのです。クリックや検索をして寄付になると知るとまるで「自分がクリック・検索してるから寄付が生まれている!」と勘違いしてしまうかもしれません。しかしそれは企業が身銭を切って寄付をするという行為に乗っかっているだけのことで、直接的な寄付をしているわけではありません。

私はこのような企業が行うプロモーションチックな寄付というのは全く否定はしません。むしろ大企業も中小企業もどんどんアイデアを出して行って、こうやって面白い企業寄付を考えればいいと思います。しかしそれは企業の寄付でしかなく、個人の寄付ではありません。自分の身銭を切り、懐から1000円でもいいので出すような寄付とはハードルの高さが違います。だからこそ、多くの人が気楽に関われるのだと思いますが。

現在の日本の寄付市場というのはどうなっているのでしょうか。内閣府のホームページを見てもわかるように企業は非常に頑張っています。検索寄付やクリック寄付など、いろいろな工夫を行いながら寄付を行っています。日本の寄付の8割が法人であり、個人からの寄付と言うのは2割に満たない割合です。当然クリックしたり検索したりした寄付というのは個人寄付ではなく、法人寄付にカウントされます。

今、日本に本当に増やさなければいけないのは個人の行う寄付です。法人は本当によく頑張っていると思います。CSRなどの一環でたくさんの寄付を行っていますが、その反面、個人寄付はなかなか伸びてきていません。我々一人ひとりはYahoo!で「3.11」と検索をして「やったぁ、10円寄付できたぞ!」と自己満足している場合なのでしょうか。毎日クリックをして「いいことをしたなぁ」と愉悦に浸っている場合なのでしょうか。

そんなことよりも身銭を切って1000円でもいいから寄付をする事のほうが重要だと思います。寄付をする先はどこでも構いません。NPO個人でもいいし財団でもいいし、大きな国際団体でもいいでしょう。自分が「コレだ!」と思うところに寄付をすればいいでしょう。もし「どこに寄付をすればいいかわからない」というならばready for?のようなサイトでクラウドファウンディングに参加してもいいでしょう。ボランティアに行った団体に寄付してもいいでしょうし、母校や自分が通っていた学童などに寄付をするのもいいと思います。

もちろんクリックや検索をすることは悪いことではありませんし、どんどんやっていくべきです。しかしそれよりももう一歩踏み出して、自分の財布から1000円でもいいから寄付をすべきではないでしょうか。そうして初めて「自分は寄付をして世の中の役に立った」そう言えるのではないかと思います。