アメリカの雇用統計が発表になる際に経済雑感として皆様と世界経済のナナメ読みをさせていただいております。
本日発表になったアメリカの2月の雇用統計は事前予想の14万5千人増を上回る17万5千人増となりました。寒波による影響が懸念されましたが速報値の数字を見る限り悪くなかったと思います。一方で失業率は技術的な理由により0.1%ポイント悪化して6.7%となりました。この雇用統計、後々に改定値が発表されるのですが、その数字が時としてドラスティックに変わることも有り、速報値へのリライアビリティは6~7割程度に抑えておきたいところでしょうか?
これを受けて3月中旬に予定されているイエレン議長率いる初のFOMC会議は当初予定通り、金融の量的緩和の縮小を継続するものとみられています。一部には直近の経済指標にやや衰えがあることから縮小のペースを下げるのではないか、とも言われていますが、まだ現段階では予定通りとした方がよさそうです。ただ、自動車産業は私は業界が言うほど数字は伸びないかもしれないと思っています。リーマンショック後の特需はほぼ一巡していますから1500万台の大台の半ばぐらいがせいぜいではないかという気がしております。
唯一、気にしなくてはいけないのはウクライナ問題ではないでしょうか? クリミアの住民投票は3月16日に予定されており、FOMCは3月18~19日です。当然、住民投票を踏まえたうえでのFOMCとなりますので波乱状況が見られる場合には一定の考慮もあり得るかもしれません。
そのウクライナ問題。3月16日の投票とはずいぶんせっかちな話だと思います。しかももともと月末だったものを繰り上げているようなのです。国の行方を決めるのに住民はわずか数週間のうちにその運命を決めなくてはいけないとするのは無理があります。ウクライナの新政権が打ち出す政策も含め本来であれば1~2年の時間は置くべきだと思うのです。それとオバマ大統領も指摘しているようにクリミアの住民がロシアに併合されたいと勝手に決めることはいくらなんでも常軌を逸しています。
しかし、ロシア人の多いクリミア地方ですからこの投票で併合を望む結果が出る可能性は大いにあるとすれば欧米は一歩踏み込んだロシアへの経済制裁に踏み込むかもしれません。一方のプーチン大統領も一定の対抗措置を持っているとされ「経済制裁戦争」に進んでいく可能性は否定できません。但し、アメリカはロシアとの地政学的距離感もありますが、欧州諸国はイギリスを含めそんなモンギリ調の経済制裁には踏みにくいというのがニュースの行間から読み込めてきます。
最悪なのはオバマ大統領の上げたこぶしはまた空振りとなることでそうなれば11月4日の中間選挙への期待度はさらに下がるというものです。
最後に我が国の首相ですが、最近、メディアでお名前を見かける回数が減って気がするのは私だけでしょうか? 昨年のイケイケドンドンの勢いは全く感じられず「守りの方」に入っているように見受けられます。安倍首相は守りは弱いとされていますのでそこは心配要因でしょうか? また、4月のオバマ大統領の訪日に関しては「韓国との関係改善をする」努力目標を提示されていました。政府間で一定レベルの会合を画策したようですが、なかなか難しい状況のようです。スケジュールが合わないとか言われているようですが、要はスケジュールをすり合わせる努力をすることはプライドが許さないというのが先方の姿勢に見えます。となれば、オバマ大統領のイラつく顔が想像できそうですね。
韓国経済についても近いうちまた、このブログで取り上げたいと思いますが、不安要素は大きいと思います。ただ、日本で出ている記事、書籍は感情が入っているのである程度は間引きした方がよいかもしれません。海外の資料ではそこまで悪くは書いていないはずです。
ということで経済雑感をつらつらと書かせていただきましたが、(ウクライナや外交問題は直接関係ないかもしれませんが)思うところは不安要素はいつの時代にもついて回るということでしょうか? ただ、人間の英知は落としどころというものを見出す一定の成長をしてきたと思います。問題解決能力ははるかに高まっているのではないでしょうか?
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年3月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。