今週初めに発表された史上最大の経常赤字と成長率の下方修正は、「アベノミクス」の終わりを象徴する出来事だった。黒田総裁は「新興国経済がもたついている」と苦しい説明をしているが、円安で輸出が減少したという現象は、円安誘導で景気を回復させる彼の方針が裏目に出たことを示している。
これは短期的には消費税増税の前の駆け込み需要で輸入が増えたとか、原発停止でLNGの輸入が増えたという要因もあるが、JBpressにも書いたように、製造業の海外シフトの影響が大きい。これは構造的要因だが、その影響が円安で強まったのはなぜだろうか?
輸出というと製品を買ってもらうというイメージが強いが、中国に輸出されるのは部品だから、中国は「お客様」ではなく「下請け」である。輸出された部品を買うのは消費者ではなく現地法人で、組み立てた完成品は日本に輸入されるから、輸出は輸入で相殺されるのだ。
通関統計でみると輸出の4割、輸入の2割が円建てだから、円安になっても円建ての多い輸出額はあまり増えないが、外貨建ての多い輸入品は(円に換算した)輸入額が増える。これが円安で貿易赤字が増えた原因である。大幅な赤字になったのは円建ての通関統計でみているからで、ドル建てでみるとそれほど大きく変わらない。
しかし国内経済への影響は円建てできいてくるので、昨年10~12月期では、GDPへの外需寄与度は-0.3だ。日経新聞に出てくるトヨタやキヤノンなどは大幅増益だが、中小の流通などはコスト増で苦しい。トータルでは、円安の経済効果はマイナスである。もともと需要不足の経済で、円安は需要を海外に流出させて、ますます景気を悪化させているのだ。それが成長率が下方修正された原因である。