GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がインフラへの投資を始めるとのことです。
ちなみにGPIFというのは「130兆円近い年金の積立金を年利4.2%で運用し続ける」という我が国でおそらく政治的に最も重要で最も無理ゲーな使命を託された独立行政法人です。世界でも最大の年金基金の運用法人ですね。ちなみに現在のところ平均の収益率は2.02%と想定の半分程度の利率に納まっています。それも昨年の資産市場のドカ上げがあってようやくこの値ですので、今のところかなり苦しい運用成績ということになります。元々の目標がかなり無茶なのでこれは仕方が無いところですね。
(厚労省資料より)
現在のところ資産の運用先は55%が国内債券でそのほとんどが国債というところなので、この収益率は当然の結果ということになります。とはいえこの数値が意味するところは「このままでは我々の世代は想定している水準では年金がもらえない」というなかなか酷な話です。
(GPIFのHPより)
この状況を改善するには「高利回りの長期安定資産が必要」ということで今回わき上がったのがインフラ投資の開始ということなんでしょう。インフラを投資でバージョンアップする、という枠組みについては再生可能エネルギーの固定価格買取り制度(FIT)においてある程度実効性が見込まれているところであり、金融面でGPIFの管理運用方針を緩める一方で、投資を呼び込める魅力ある投資商品をインフラ更新の責を担う政府・自治体の側が作れるかどうか、というのが結構重要な視点になるかと思っています。
(国交省HPより)
そういう意味では国土交通省は今後のキーマンとなるように思えまして、彼ら自身でこのままでは日本のインフラは維持できなくなると継承ならしていることもあり、「民間投資でインフラを更新する」というスキームを作る努力が必要になってくるように思えます。予算配分でインフラを更新しようとする限りは利権化して利回りが低くなる(っていうかマイナスになる)ことは間違いないので、なんとか政治が絡まずにすむ投資商品を作る方向に政策資源を向けてもらいたいものです。個人的にも、政府が予算だけ考えて市場から乖離している現状は大変問題があり、こうした方向での政策転換は必要なことだと思っています。なんとなくジョージ・ソロス氏の影が見えるのはキナ臭いですが。
こうしたGPIFの管理運用方針転換は、国債を買い支える日銀バズーカと、電力市場や医療市場改革などの大胆な規制緩和による投資先の開拓との連動が不可欠なわけで、安倍政権の今後を占う上で最も重要な作業の一つになるような気がしています。当面は5年で2800億円と130兆円という全体の基金の規模に比べれば小さい額となりますが、それでも十分大きいですし、ここから少しずつ枠を広げていってほしいものです。
ではでは今回はこの辺で。
編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2014年3月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。