オバマ大統領が4月23日夜、安倍晋三首相と銀座の高級寿司店で会食したというニュースは読者の皆さんもご存知だろう。読売新聞によれば、「オバマ大統領は14貫の寿司をペロリと食べた」という。大統領自身、「人生で最高の寿司を食べた」という。
ところで、ソチ冬季五輪で金メダルを獲得した羽生結弦選手が24日、東京・有楽町の外国特派員協会で会見しが、その中で「僕自身、食事にあまり興味がなくて……」と答えているのを読んで、食欲だけは健在な当方はビックリした。19歳の青年、それもスポーツ選手が「食事に関心がない」ということをすぐには信じられなかった。
もちろん、スポーツによっては食を自制しなければならない種目はあるが、「食事に関心がない」という発言はその種の問題ではないことは明らかだ。
話は飛ぶが、欧州に長く住んでいる当方に東京の友人たちは、「君は海外に住んでいていいな」と羨む。上司からガミガミいわれることなく自由に生活できる、というイメージが友人たちにはあるからだ。
多分、友人は海外長期滞在日本人にも大変なこともあることを知らないのだろう。それは、美味しい日本食を味わう機会が少ないということだ。
日本には駅校内の立ソバ屋から銀座の高級寿司屋まで多種多様の日本食が溢れているが、当方が住んでいる音楽の都・ウィーンでは日本食材を得ることは簡単ではないし、値段も高い。
福島第1原発事故後、日本から輸入される日本食には放射能チェックの検査がある。事故直後は検査に数カ月かかった(最近は検査も簡単になった)。ウィーンの日本食材の店舗から日本製品が消え、韓国と中国製商品が占領してしまったほどだ。
幸い、現在は日本食屋に行けばラーメンやカレー粉、醤油、味噌など基本的な日本食材は手に入る。しかし、その範囲は限られていることはいうまでもない。
だから、「海外に住む日本人は自由を得たが、日本食を味わう恩恵を失ってしまった」というのが、海外長期駐在日本人の本音ではないか。
参考までに、ウィーン市内には数軒の日本レストランがあるが、今年に入ってウィーン市最大の日本レストラン「天満屋」が突然閉店してしまった。岡山の本社から閉店命令が出たからだという。小規模な日本食レストランを除くと、現在はアラブ富豪が所有するホテル最上階の日本レストランがある程度だ。
自由を選ぶか、美味しい日本食を味わうか、海外長期駐在日本人は時としてハムレットのような呟きが飛び出してしまうのだ(ひょっとしたら、食いしん坊の当方だけが呟いているかもしれないが……)。
それにしても、羽生結弦選手はどうしたのだろうか。「食の天国」に住んでいながら、天国の住人としての特権を自ら放棄するとは。
■短信
ヨハネ23世とヨハネ・パウロ2世の列聖式
ローマ法王フランシスコは4月27日午前、バチカン法王庁のサンピエトロ広場でヨハネ23世とヨハネ・パウロ2世の2人のローマ法王の列聖式を挙行した。
ヨハネ23世(在位1958年10月~63年6月)はカトリック教会の近代化を決定した第2バチカン公会議(1962~65年)の提唱者であり、信者から最も愛されたローマ法王といわれる
一方、ヨハネ・パウロ2世(在位1978~2005年4月)は“空飛ぶ法王”と呼ばれ、在位27年間で世界127カ国を訪問し、法王外交を展開させた。ポーランド出身の法王として冷戦時代の終焉にも大きな役割を果たした。
なお、列聖式には、前法王べネディクト16世も同席した。バチカンによると、世界から約100万人の巡礼者が集まったという。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年4月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。