これからインフレになるの?

池田 信夫

人手不足が騒がれ、日本経済にもインフレ(物価上昇)のきざしが見えてきました。4月から消費税が3%上がったので、それを入れると確実にインフレになりますが、それを引くとどうなるでしょうか?


消費者物価指数(2010年=100)出所:総務省


上の図はここ4年の消費者物価指数(CPI)のうごきをみたものです。総合指数というのは全部のものの値段、「生鮮食品を除く総合指数」というのは日銀の基準にしている「コアCPI」、「食料・エネルギーを除く総合指数」というのは、世界の他の中央銀行が基準にしている指数で、日本では「コアコアCPI」と呼ばれます。

このように食料やエネルギーを別にするのは、相場によって値段の動きが大きく、全体の物価の動きとは違うことがあるからです。そこで普通の商品だけの値段をあらわすコアコアCPI(赤い線)をみると98.6と、2010年より下がっています。つまりデフレです。

それに対して総合指数とコア指数はインフレになって、大きな差が出ています。エネルギー価格を含まないコアコアがデフレなのに、エネルギー価格をふくむコア指数や総合指数がインフレになったのはなぜでしょうか?

これはよい子のみなさんでもわかりますね。エネルギー価格がインフレの原因です。日銀がエネルギー価格をうごかすことはできないので、これは日銀のおかげではありません。その原因としては、原油価格が2.5倍に上がっただけではなく、円安(ドル高)で原油の値段が2割も上がったことも大きい。

もう一つの原因は、民主党政権が全国の原発を止めたため、LNG(液化天然ガス)の輸入が年間3.6兆円もふえたことです。このために電気代も2割ぐらい上がりました。これはものをつくるコストが上がってインフレになる「コスト・プッシュ」という悪いインフレです。

おかげで実質賃金が下がって、人手不足になってきました。失業率も完全雇用に近くなってきたので、これから名目賃金も上がるかもしれません。原発も止まったままなので、エネルギー価格もまだ上がります。この調子だと黒田さんの目標にする「コアCPIで2%」は実現する可能性もありますが、それで誰がうれしいんでしょうか?

物価が上がると、いつも決まった金額のおこづかいしかもらえないよい子のみなさんが買えるものが少なくなります。最近、コンビニのおにぎりがちょっと小さくなったという話もあります。同じ給料をもらっているサラリーマンも貧しくなりますが、値上げできる企業はもうかります。それがインフレの目的なのです。

増税で2%ぐらいインフレになるのに、そこへさらに2%インフレになったら、みなさんは4%も貧乏になります。それでものを買わなくなると、景気が悪くなります。このようにインフレと不景気が同時に起こるのをスタグフレーションといいます。それでよろこぶのは、安倍さんと黒田さんだけでしょう。