クラウドソーシングのライティングはプロ向けではなく内職だ

松本 孝行

1記事150円で書くライターと、媒体価値の上がらないWebメディアという記事がBLOGOSで先日人気だったようですが、どうもウェブ上ではこのライティング仕事の単価が安いことを取り上げて、ライター業は大変だというような話が定期的に話題になっています。

私は独立から今も続けてウェブライティングの業者にお世話になっており、上記記事で取り上げられている会社とも親しくさせて頂いております。ただ、今回のBLOGOSの記事や今まで問題視されてきた議論というのは基本的に的外れであり、そもそもウェブライティングとは何か?がわかっていないことから誤解が生じているように思います。


そもそもまずランサーズやクラウドワークス、@SOHOなどで募集しているライターの仕事というのは名前を売ることは出来ません。ほぼすべて匿名で書かれるものが中心になっています。なぜならそれらはSEOであるとかアフィリエイトなどを目的としている物がほとんどだからです。内容も濃いものを求めておらず、ちょっと調べたらわかる程度のものなので1記事に書ける時間は30分もありません。

SEOを目的としているライティングというのはサテライトサイトの作成です。一部のSEO業者はFC2やライブドアブログなどを使って、被リンクを目的としたブログを沢山作成していました。そしてそのサイト内のコンテンツとして文章が必要だったので、その文章・記事を外注しているのです。例えばとあるエステサロンを顧客に持っているとした場合、エステに関する記事を書きます。「エステの効果は?」「エステのローンって高いの?」「エステサロンの選び方」のようなタイトルをつけ、そこから記事を書き、20記事~50記事ほど集めたところで、顧客のエステサロンのサイトに被リンクを貼り、外部対策のSEOをしているのです。

アフィリエイトの場合も似たような形で記事を書きます。例えばウォーターサーバーであれば「ウォーターサーバの選び方」「お得なウォーターサーバーの使い方」「ウォーターサーバーと放射能の関係」などのタイトルをつけてライティングします。そうして記事をたくさん作り、ウォーターサーバーのノウハウサイトを作って、そこにアフィリエイトリンクを貼ります。検索でやってきた人がサイトのリンク経由でウォーターサーバーの契約をしてくれることを狙って作られています。

このようなサイトを作るためにウェブライティングのライターを集めているのです。nanapiであるとかQ&Aサイトなども同じようなもので、アフィリエイトサイトの亜種と言えるでしょう。いわばそこにたくさんのアクセスを集めてPVを上げ、そこから広告をクリックしてくれる人、広告から購入をしてくれる人を集めるためのコンテンツとして、ライティングを募集しているのです。

つまり根本的にクラウドソーシングで募集されているライティングと新聞や雑誌などに記事を書くライティングは全く違うのです。例えるならばウェブライティングは内職なのです。袋詰や封筒作り、ボールペンの組み立てのような内職とウェブライティングは同じです。こういった内職の人が十分なお金をもらえる作業というのは今も昔もありません。封筒やボールペンを組み立てても一つ1円程度のものでしょう。それでも安すぎる!なんていう人はいません。安いですけれども分相応の報酬といえるでしょう。

また、ウェブライティングをやっている人はBLOGOSの記事を書いた方のようにプロのライターを目指しているのか?というとそうではなく、ちょっとした隙間の時間にライティングをして1~3万円ほど稼げればいい、そういう風に考えているのです。その証拠にウェブライティングを発注している会社の方と話をすると、通勤の電車でスマホを使って400字程度の記事を書き、提出する若い女の子もいるとおっしゃっていました。

このことからわかるようにそもそもプロが書くレベルの記事は求められておらず、あくまでPVを稼ぐための記事を求めており、最初からプロのライターとして食っていく人たちを対象にしている仕事ではないのです。あくまで空いた時間にちょっとだけ稼ぎたいとか家の中から出られないという人を対象に募集をしているのです。つまりこの批判や問題提起というのはずれているのです。ライターという同じ単語を使っているので勘違いしてしまうのかもしれません。

ちなみに記事の方は1記事に3時間をかけるので時給150円になってしまう、ということをおっしゃっています。私事ではありますが、現在私が頂いている仕事は時給換算しますと約2000円程度になります。特別扱いをしてもらっているということもありますが、そうでなくてもだいたい時給600円~900円程度に換算出来るでしょう。プロにとって見れば安すぎるでしょうが、アマチュアのプロライターを目指していないお小遣い稼ぎには十分な金額ではないでしょうか。

以上です。質問があればお気軽にtwitterのアカウントで受け付けますので。