国内炭の歴史 ~ もう誰も炭鉱では死んでいない --- 石川 和男

アゴラ

今夕のNHKニュースによると、トルコ西部の炭鉱爆発事故の犠牲者はこれまでに282人に上り、トルコの炭鉱事故としては史上最悪の惨事となったとのこと。先のブログ記事でも書いたが、数多あるエネルギー資源の中で、石炭は最も人命喪失リスクが高い。


日本における石炭の位置付けは高い。石炭火力で見ると、一般電気事業者である電力10社の発電電力量の25%程度を占めている(資料1)。石炭の供給元としては、コストや品質の観点から、かなり以前に海外炭がほぼ100%となった(資料2)。

高度成長期以降の国内炭の歴史は、国内炭産業の縮小・廃止への途であった。石炭を巡る人命喪失リスクは上述の通りだが、国内炭生産量の減少に伴う国内炭鉱労働者数の減少により、事故件数や罹災者数も減少してきた(資料3・資料4)。

こうして歴史を見ると、日本を支えてきた国内炭産業は、多大な犠牲の上に成り立っていたことが窺える。炭鉱事故による罹災は、石炭特有のリスクだ。原子力、ガス・石油・水力・地熱その他再生可能エネルギーにも、それぞれ特有のリスクがある。今の日本では、炭鉱ではもう誰も死んでいない。

因みに、先のブログ記事で掲げた資料3にあるように、原子力発電に係る人命喪失リスクは石炭、石油、ガス、水力に比して格段に低い。

<資料1:日本の発電電力量の推移(一般電気事業用)>

(出所:経済産業省資料
<資料2>
(出所:経済産業省資料)<資料3>(出所:経済産業省資料)<資料4>

(出所:
経済産業省資料


編集部より:この記事は石川和男氏のブログ「霞が関政策総研ブログ by 石川和男」2014年5月15日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった石川氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は霞が関政策総研ブログ by 石川和男をご覧ください。