都政ではなくて国のお話にはなりますが、先日、休眠口座に関する超党派議員連盟が創設されました。
「休眠口座」とは長期間(10年以上)お金の出し入れがない銀行口座で、預金者の権利は消滅したと見なされ、その預金は銀行の利益として計上されています。その数は年間1300万口座、800億円以上になります。
ただ、もちろん救済措置もあり、しっかりと本人確認ができる証明書類等があれば、権利が執行した預金も引き出せるとしています。この結果、毎年300億円程度が休眠口座からも払い戻されているそうです。
とどのつまり、毎年約500億円程度の「休眠口座」預金が銀行の利益になっているわけです。
こうした休眠口座の預金が
「イチ企業である銀行の利益になるのはおかしい」
「社会のために有意義に使おうじゃないか!」
というのが、この度超党派の議連が発足した論点です。実際に、韓国やイギリスなどでは近年こうした休眠口座預金を活用した社会的事業が始まっています。
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急な引き出し等もあるでしょうから、仮に現在銀行の利益になっている500億円のうち、300億円程度が社会的な事業の財源になるとして、一体どんなことができるのでしょうか?
例えば、日本全国で児童養護施設に通う子供たちの希望者全員を大学に進学させることができます。
例えば、日本中で心臓移植手術を希望するすべての人たちに、十分な貸付ができます。
例えば、再スタートを希望している全国のホームレス全員に、就職活動のサポートが可能になります。
(『日本における休眠口座基金の創設プランの策定』中間調査報告書より)
東京都のシルバーパスの予算が約160億円であることを考えると、年間300億円という原資はかなり有効に活用できるのがわかりますね。
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とはいえ、休眠口座預金の活用にあたってはいくつか乗り越えなければならない課題があります。
まず第一に「誰がどうやって使うのか」という点。方法論としては、以下の二択でしょう。
1. 国庫に直接収容する
一番ストレートなのは、これ。ですがこの場合、休眠口座の預金は何に使われたのかわかりません。
また、直接的に国家が国民の預金に手を突っ込むことになるので、憲法上、所有財産権の侵害の観点から抵抗も強そうです。
2. 第三者機関(財団など)を設立して、特定の目的のために使用する
フローレンスの駒崎さんなどが主張しているのは、この形。この機関はNPOバンクや中間支援組織、大学などと連携して、ソーシャルセクターに対する効率的な支援を行います。
このケースは政府や行政では対応しづらい
「緊急性・即時性が求められる支援」
「きめ細かい育成的な手法が求められる支援」
の両面での活用が期待できる点がポイントです。
反面こうした機構を設立する際に、官僚の天下り組織にならないか、十分すぎる注意が必要になります。ていうか、その心配が大いにあるので…。
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おそらく後者の形で今後は検討が進んでいくかと思いますが、「どのような主体が」「どのように用途を決めるのか」という点を巡って、現在政治家たちが水面下でパワーゲームを進めていることは想像に難くありません。
なにせ、年間300億円以上の財源。自分が関わる利権にその財源を引っ張ることができれば、これほど直接的に票になるものはありません。嫌ですね、政治家って…。
せっかく、銀行の利益ではなく国民と社会のために活用する機運が盛り上がってきているこの「休眠口座」。
この使用用途を天下り組織や政治家のものにさせないためには、国民がこれを不断の監視下に置き続けるしかありません。
色々なニュースが流れる中で見落とされがちですが、ぜひともこの問題にも関心を払っていただければと思います。休眠口座について更なる詳細は、下記サイトもご参考ください。
それでは、また来週!
編集部より:この記事は都議会議員、音喜多駿氏のブログ2014年5月9日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった音喜多氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。