政治家がネットでの発信に熱心でない、最大の理由とは? --- おときた 駿

アゴラ

本日は早稲田大学政治経済学部のOB組織である「稲門政経会」の総会及び懇親会が、大隈講堂&リーガロイヤルホテルで開催されました。

総会の基調講演の講師は、あのiモードの開発者で現在はグリーやドワンゴの社外取締役を務める夏野剛さん。


彼は講話の中で、

・いかにITによる革命で、世の中が変わったか
・そんな中で日本の政治は、致命的にネットやITに理解がない

という話をしておりまして、そんなことを聞きながら、なんで相変わらず政治家はネットやITに熱心にならないんだろうかとぼんやりと考えていたのですが、彼の終盤のメッセージ

「日本人は調和を重んじるあまり、フリクション(摩擦)を過度に恐れる」

ということを聞いて、何か腑に落ちました。そうです、政治家がネットでの情報発信に熱心ではなく、仮に頻繁にSNSやブログを更新する議員であっても

「〇〇駅で街頭演説活動を行いました!」
「××という案が出ていますが、皆さんはどう思いますか?」

などという当たり障りのない内容になってしまうのは、まさにフリクション(摩擦)を恐れているからに他なりません。

ネットはご案内の通り、すごい勢いでスピードが流れていきますし、一たび「炎上」すればものすごい議論が巻き起こります。

端的に言えばこの「摩擦」とそれによって起こる「議論」に対して、政治家はまったく耐性がなく、むしろ面倒くさいとしか認識してないのです。

例えば先日、私は点字ブロックの不備についてネットで意見発信を行いました。

点字ブロックから手すりが?!見えてる自分に「見えていなかった」コト

おかげさまでこちらの記事には大きな反響があったのですが、様々なご意見も寄せられました。その中には

「これは点状ブロックで障害物を示すものなので、おときた氏の指摘は間違っている」

とのコメントが多くありました。

このご指摘はその通りです。が、私としてはそれでもこの状態には問題が残り、対応が必要だと考えていましたので(上記ブログの追記参照)、それはそれとしてまた状況に進捗があれば、ブログで報告しようと考えていました。

ところが、1週間もしないうちにネットの中からは

「間違いを指摘されたのに、この議員は訂正しようともしない」
「不誠実だ」「無責任な情報発信だ」

という声が散見されるようになりました。

これらのご意見はもっともでもありますし、すぐにそれらのコメントについて対応しなかった私の不備でもあります。

が、誤解を恐れず状況を正直に申し上げれば、ネットを主戦場とする私レベルの議員でも、このスピード感でネット論壇の意見についていき、対応するのはなかなか難しいということです。

どうしても日々の業務に追われていれば、こうした対応については「とりあえず後でいいだろう」と思って、後回しにしてしまいがちです。

ところが、ネットやITという非常にスピードが速い場所においては、このちょっとした「先送り」が思わぬ大炎上につながります。

だったら、そんな火種を作るくらいなら最初から「そんな面倒な情報発信はしない方がいいや!」と考えるのが、『合理的で選挙に強い政治家』の発想となるのは仕方がないことかもしれません。

摩擦や議論を恐れず、またそれがネット上で巻き起こる際のスピード感についていけるだけの自分自身のレベルアップが望まれるとともに、政界にいる人材とネット世界でのギャップを感じる一日でありました。

懇親会後、政治学科のゼミOBたちともまた白熱の政治談議があったのですが、それはまたの機会に…

応援部のデモンストレーションからも、力をもらいました!

それでは、また明日。


編集部より:この記事は都議会議員、音喜多駿氏のブログ2014年5月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった音喜多氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。