W杯の総括で「日本と世界はまだ差がある」は間違い

松本 孝行

ワールドカップはすでに日本代表も負けてしまったので見ていない、という人が大半かと思いますがドイツとアルゼンチンの決勝戦は楽しみです。私は昔からドイツびいきで、ウイニングイレブンでもサイドアタックからビアホフやヤンカーにクロスボールを合わせるという単純明快なプレイを好みます。

ワールドカップイヤーということもあって識者のコラムなどにはワールドカップを引き合いに出したものが多く見られます。特に日本代表が1勝もできずに終わったことにより「日本は世界との実力にまだ差がある」というように主張される方も多く、さらに日本人が勝てないのは過保護だからだというような意見も見受けられます。

しかし残念ながら日本と世界との差なんていうものはないのです。むしろ若い世代ではサッカー日本代表は強豪の仲間入りを果たしています。


例えば前回のオリンピック、覚えていますか?2012年に行われたオリンピックでは23歳以下のメンバーを中心にして行われていましたが、第4位という立派な成績を収めました。銅メダルも取れるかと思い、盛り上がりましたが残念ながら最後は韓国に3位決定戦で負けてしまいました。

若い世代がすごかったのは前回のオリンピック世代だけではありません。黄金世代と呼ばれた時代があり、高原選手・小野選手・稲本選手などの選手が活躍していた時代はなんと日本が世界大会で準優勝をしています。ワールドユース選手権・ナイジェリア大会ではイングランド・ポルトガルといった強豪を破って決勝まで進んだのです。この時はかなりサッカー界でもニュースになったほどです。

ロンドンオリンピックで第4位、そしてスペインに敗れはしましたがユース大会では準優勝まで進んだ実力が日本にはあるのです。この事実を見たら「日本と世界にまだ差がある」なんて思えません。全く差はなくなってきている、そう考えるのが自然でしょう。

しかし何故かA代表になると成績が芳しくはありません。ワールドカップではベスト16になったことが二回あるだけで、明らかに若いユース世代の勢いがなくなっています。サッカー日本代表は不思議なことに若い時は世界に通用するのにA代表になると世界と差ができてしまうと考えたほうが自然ではないでしょうか。

この理由はなぜだかはっきりはしていませんが、サッカー評論家の方々がおっしゃるように4年間のチーム作りに問題があるのでしょう。今のところはディフェンシブなチームでワールドカップベスト16になり、攻撃的なチームで予選敗退をしているようですから、どういうチーム作りをするのか、テストマッチで戦うチームや他の大会に遠征するかしないかなども大きな影響を与えているのではないかと言われています。

サッカー日本代表については若い時に強く、A代表になると弱くなります。それと比べて、野球に関して言えば若い頃も強くてプロになってからも強い状況が続いています。ジュニア大会でも世界で優勝していますし、WBCでも優勝をしています。サッカーではうまくいかないのになぜか野球ではうまくいくのはなぜなのでしょうか(もちろんメジャーリーグの選手が出ていない、チームスポーツの違いという指摘もあるでしょうが)。

最近では体操などもかなり若い頃からの育成に成功し、内村選手や白井選手など世界で渡り合えるレベルの選手を生むことができています。このような野球や体操の成功事例を見れば、日本全体が若いうちは強かったけれども大人になれば弱くなるというわけではないようです。やはりサッカー日本代表にだけ足りないものがあるのでしょう。

ワールドカップの日本代表の試合結果を持ってして「日本と世界とはまだ差がある。だから日本はダメなんだ」とまるで日本全体がダメかのようなことを書くブロガーもいるようですが、そうではありません。野球や体操などは上手に育成ができているし、サッカーも若いうちは強いのです。唯一、A代表のチーム作りだけに問題があり、これは個別の問題で、一般論で語られるものではありません。

無理やりワールドカップに関連付けて日本全体のダメな点を指摘しても的外れではないかと思いますよ。