欧州でパレスチナ人の抗議デモ --- 長谷川 良

アゴラ

ウィーンで7月20日午後4時過ぎ、パレスチナ自治区ガザ市のイスラエル軍の軍事攻撃に対して抗議するデモ集会が行われた。主催者側によると、約1万1000人のデモ参加者がウィーン市西駅前を出発し、英雄広場まで行進した。デモ参加者は30度を超える蒸し暑い午後、汗を流しながら、「イスラエルはテロリストだ」「ガザに平和を」などとシュプレヒコールを上げながら歩いた。


▲イスラエル軍のガザ攻撃を批判するパレスチナ人のデモ(2014年7月20日、ウィーンにて撮影)


イスラエル軍のガザ区での軍事活動を批判するデモは週末、ロンドン、ストックホルム、パリでも行われ、パリでは一部暴動化して警察部隊と衝突したというニュースが流れてきたが、ウィーンではデモ参加者と警察部隊との衝突は生じず、平和的に終わった。デモ集会にはオーストリアに住むパレスチナ人のほか、トルコの反体制派たちも多数参加した。パレスチナの国旗に混ざってトルコの国旗を持った参加者の姿が目立った。

イスラエルとパレスチナの今回の衝突は、イスラエルの3人の青年が拉致され、後日、死体で発見されたことが発端となった。イスラム過激派組織ハマス側は関与を否定したが、イスラエル側は「ハマスの仕業」として報復を宣言。その直後、今度は1人のパレスチナ人の青年の死体が見つかった。イスラエル側は「パレスチナ人青年殺害とは関係ない。ハマスの軍事拠点を中心に軍事攻撃をしたが、民間人を衝撃の対象としていない」と弁明したが、パレスチナ側は「イスラエル側の報復」と確信し、イスラエルへの批判を強め、イスラエル領土に向かってミサイルを発射する一方、地下トンネルを通じてイスラエル内に侵攻し、奇襲作戦を展開させている。

それに対し、イスラエル軍は空爆とともに、地上部隊を導入して、ハマスの軍事拠点の壊滅に乗り出してきた。イスラエル軍は20日、ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザの北東部シェジャイア地区を爆撃した。現地からの情報によれば、少なくとも40人が死亡、約400人が負傷したという。8日の戦闘激化以来、1カ所でこれほどの犠牲者が出たのは初めてだ。軍事衝突は確実にエスカレートしてきている。

国連の潘基文事務総長は同日、訪問先のカタールで、軍事力で圧倒的なイスラエル軍の攻撃を批判。欧米のメディアもイスラエルの空爆で負傷したパレスチナ人の様子を大きく報道し、イスラエル軍の軍事攻勢を批判するトーンを高めてきた。それに対して、イスラエル側は「ハマスが発射するミサイル攻撃で国民は犠牲となっている。ハマスは国民を盾にミサイルを打っている。われわれは空爆前にはビラを配って避難するように呼びかけたが、ハマスは市民に自宅から離れるなと命じている」と反論している。

イスラエルとパレスチナ間の和平交渉に汗を流してきたが、和解の見通しがないため交渉を一旦中断していたケリー米国務長官は20日、和平交渉に再度乗り出す姿勢を示している。ただし、「米国はイスラエル寄りであり、中立の調停は期待できない」という声が中東では強い。欧州連合(EU)が調停役に乗り出すべきだという意見があるが、誰が調停役を買って出たとしてもイスラエルとパレスチナ間の和平交渉は難しい。明確な点は、大多数のイスラエル人とパレスチナ人は共存を願っていることだ。両民族の指導者たちは政治的思惑や宗教的相違などを克服し、和平の道を模索すべきだ。武力では相手を支配できても、平和は実現できないのだ。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年7月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。