知財計画は、実行すべき施策を担当省庁名とともに列挙し、工程表を添えて、政府の行動指針とします。それを毎年、検証しつつ、施策を上塗りしていきます。
各省庁も成果を上げるべく取り組んでいます。例えば海外展開策について。経産省によれば、国際見本市などで成約件数が1年で20~25%増。総務省によれば、放送コンテンツ二次利用の権利処理を進めるためaRmaを設立。カバー率9割で、処理時間が3割削減とのこと。成果が現れてきました。
とはいえ、コンテンツの基盤整備と海外展開策に政府を挙げて取り組み始めてから、さほどの年月はありません。実績はこれから。緩めずまいりましょう。
知財計画2014年の議論、大詰め会合のメモです。
・松竹迫本さん:継続性が重要。コフェスタ、クールジャパン機構、BEAJなど長期施策が進んでいる。省庁タテ割りから横串の策も進んでいる。
→はい。ただ、まだ始まったばかりです。
・ドワンゴ川上さん:著作権侵害、海賊版について、海外企業だけでなく、海外企業のふりをする企業もいる。対策が必要。
→そこは毅然とした権力の行使が必要ですね。
・竹宮恵子さん:中国等の留学生の大半は海賊版で学習しているが問題は理解している。ユーザの教育やコミュニティを活用した啓発も大切。
→ハードな対策とソフトな教育。双方に力を入れたい。
・ドワンゴ川上さん:パーソナルデータのルール化はGoogleなどグローバル企業を利するもので、日本の競争力を削ぐ。
→国内ルールとグローバル企業の問題は今IT政策の最重要課題。だが政府は鈍い。
政府・知財計画には教育情報化も含みます。特に、デジタル教科書を正規教科書とするための制度整備に関し、知財計画2012では「検討」、知財計画2013では「措置」の文言が明記されました。これについて議論が集中しました。
まず山本一太大臣から「知財計画にある”デジタル教科書の制度”をどうするのか」という質問。文科省は「未検討」との回答。ぼくは「デジタル教科書の制度検討は2年前に政府知財計画に明記されたが、まだ検討が始まっていない」と指摘しました。座長は控えていないといけないんですけどね。
そこで大臣から「知財本部の場にて、デジタル教科書制度を巡る課題を文科省が整理し、議論せよ」との指示。はい、動かしましょう。
・竹宮恵子さん:ICT教育はサーバ管理などネットワーク対応が重要。
→はい、端末や教材よりそちらのコストが大きくなると思います。
・東大・喜連川さん:大学のためのクラウドサービスを提供している。そうしたシステムをインフラとして共通利用すればよい。
→学校ごとに閉じたシステムですから大いにムダですよね。オープンデータも教育情報化も、知財本部とIT本部の連携、ハード・ソフト一体化が重要。よろしくおねがいします。
ということで、このあと知財計画2014の策定へと進みます。その内容は、別途。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2014年8月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。