ALSの氷水案件で“死亡”事案もあるようですが

新田 哲史

どうも新田です。ここ最近、アゴラを留守にして東洋経済オンラインの方で野良仕事をしております。ところで例のリア充クラスタ界隈で話題でとやらで、ALSの3文字が霞んでしまった氷水バケツリレー案件でございますが、国内の超大物第1号として、ゲーハー社長が満を持して本日9時半、チャレンジなさるようです。


この1年半、おかげさまで世の中のムーブメントを扇…もとい先導している方々と数多くお知り合いになった関係で、私のFacebookタイムラインもすっかりこの動画投稿で大盛り上がりでして。例によって、おときた君もさっそくこの波に乗っております(撮ってくれる彼女がいないので自宅のふろ場でiPhone固定自撮りの模様です)。


もともとは駒崎さんから小泉進次郎さんに渡しかけたバトンがあっけなく振り落されたらしく。まー、浮世の社会啓発事案等に安易に乗らないあたりが超然としているといいますか、まあ、彼の事務所からみれば「未来の総理が約束された身なんだから、下々のおまえらと違って、いまさらネットでセルフブランディングなんかする必要ねーよ」というところかもしれません。

この手の騒ぎは好きな私めですが、どうも今回はしっくり来ないんですよね。いや別にこういう社会系案件に注目を集めるためにキャッチーさを追求すること自体は必要だと思いますが、典型的なインフルエンサー重用案件になっている分、上滑りにならずALS認知が地に足の着いた形で社会的に広がっていけるかどうか、まだ疑問を持っております。このあたり、アゴラで最近ご無沙汰の村井姉さんに解説いただきたいものですが、今のところ、アメリカの方では例年の数倍の寄附が集まって日本でも加速してるらしいです。しかしジャンルは違うものの、たとえばAKBのフォーチュン案件なんかのようにすればダンスの輪とともに共感の輪も広がっていくのかなと思いますが、本件は「下々」の人間が参加するにはハードルが高い建て付けに見えてしまって「リア充」クラスタ(例・経営者と社員、FB友達)に限定された“から騒ぎ”に終わらなければいいのだけれど、と老婆心的に思うわけなんですが。


もうひとつ心配なのは、事故やトラブル。すでにネット上では、無理強いされて揉めたとされる話もあるようですし、急に冷水を浴びると心臓への負担も懸念されます。もっとも、リア充界隈の方々は強心臓だからこそ起業やら出馬やら、凡人には出来ない荒業が出来るわけで心配はしておりませんが、ご本家アメリカでは参加者の水死案件も出ているようです。私は英語からきしなので、知り合いの翻訳をまま転載すると、こういう事案のようです。

ナンタケットの建物から飛び込んだ男性が死亡 非番のライフガードの救助空しく
コリー・グリフィン氏はナンタケット島から父親に電話をかけ、有頂天になっていた。27歳の同氏は、筋萎縮制側索硬化症(ALS)と闘う友人のピート・フレーズ氏の為に氷水を頭から被るパフォーマンスを行い、バイラル化して10万ドルを得たばかりだった。

「世界一の幸せ者でした」と.父親のロバート・グリフィン氏は息子について語っている。「昨夜電話してきて、自分は楽園の中にいると言ってましたよ」

数時間後の土曜の午後2時。グリフィン氏はストレイト・ワーフにある「ジューシー・ガイズ」の建物から埠頭に飛び込み、一度は浮いたものの、その後沈んでしまい、二度と上がってこなかったと、地元のナンタケット警察署では話している。(2014年8月16日 ボストン・グローブ紙)

直接の因果関係こそ無さそうですが、バイラル案件でバイタル事案というのは、洒落にもなりませんからマジで。意識高い系をマネて人生上滑りしている意識高い(笑)系の方々がFBにモノマネ投稿される際は、もろもろご留意いただければと思います。ていうか、ちゃんとALSの人たちのこと考えてんのか、お前らって感じですが。

ところで汐留に来たバトンは今後、品川シーサイドに行くんでしょうか。ただゲーハーからミッキーにバトンが渡ってもあまりサプライズ感がないような気もするんですが、いずれは富ヶ谷にたどり着いて、安倍さんが世耕さんあたりに炊き付けられて決断を迫られる事態も時間の問題かもしれません。ちなみにオバマさんは寄附のほうを選択されたようです。

ALSのことが意識高い系クラスタのから騒ぎに終わらず、社会の本質的理解が進むことを心から願っております。

新田 哲史
Q branch
ソーシャルアナリスト
個人ブログ