米7月住宅着工件数、強い数字に踊らされるなかれ --- 安田 佐和子

アゴラ

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米7月住宅着工件数は109.3万件となり、市場予想の96.3万件より強い結果となった。前月の94.5万件(89.3万件から上方修正)を15.7%上回り、3ヵ月ぶりに増加。件数自体は、米政府機関の閉鎖明けを迎えた2013年11月以来の高い水準を遂げている。

内訳をみると、一戸建てが8.3%増と過去2ヵ月分の減少を完全に打ち消し65.6万件と少なくとも年初来で最高に。複合住宅も28.9%増と過去2ヵ月間の減少を超える大幅増を示し43.7万件と、強い数字を叩き出した。前年比での住宅着工件数は20.2%増と、前月の12.1%増を含め増加トレンドを維持。複合住宅が47.9%増と賃貸需要を反映し4ヵ月連続で大幅増だった半面、一戸建ても7.3%増と5ヵ月連続で増加した。

4大地域別では、前月と同じく3地域で増加。今回は中西部のみが24.8%減(前月から減少に反転)の16.4万件だった。他は軒並み上向き特に北東部が44.0%増の14.4万件、西部も18.6%増の34.5万件とそれぞれ2ヵ月連続で2桁の伸びを謳歌している。住宅市場の規模がもっとも大きい南部は29.0%増と、前月分の減少を打ち消し51.1万件だった。

北東部、南部、西部で2桁増を達成(前年比とありますが、前月比の間違いでしょう)。
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(出所 : CNBC)

米7月建設許可件数は前月比8.1%増の105.2万件となり、市場予想の97.3万件より強い結果となった。3ヵ月ぶりに増加し、2008年6月以来の高水準を達成した4月に次ぐ高水準。内訳をみると、一戸建てが0.9%増の64.0万件と3ヵ月連続で増加している。複合住宅も21.5%増の41.2万件と3ヵ月ぶりに増加した。建設許可件数の前年比は7.6%増。一戸建てが3.9%増と2ヵ月連続でプラスだったほか、複合住宅は14.6%増と2ヵ月連続で2桁ペースを保った。

米7月建設中件数は前月比0.5%増の76.8万件となった。件数ベースでは少なくとも、2009年1月以来の高水準を達成。一戸建てが0.6%増の34.5万件と5ヵ月連続で増加したほか、複合住宅も4.7%増と増加トレンドをたどり44.1万件だった。

大和キャピタル・マーケッツのマイケル・モラン米主席エコノミストは、結果を受けて「7月の上振れは複合住宅に集中している」と指摘。着工件数着工件数の前月比が28.9%、6月分の上方修正が6.6%を合わせると「ここまで大きな変動は1990年以降3回しかみられていない」ことから、「ボラティリティの一環と判断でき、現状の勢いを維持できるとは想定しづらい」と慎重な見方を寄せた。また一戸建ても「着工件数は2013年10-12月の水準に届かず、建設許可件数の伸びは0.9%増と小幅に過ぎない」とあって、住宅市場が力強い回復を遂げるとの期待は時期尚早との見方をにじませた。

複合住宅の伸び、6ヵ月平均を大きく超え金融危機以前の水準を回復も・・。
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(出所 : 大和キャピタル・マーケッツ)

以上、いかがでしたか。確かに住宅着工件数はマーケットが手を叩いて喜ぶ数字でした。とはいえ、けん引役は複合住宅。一戸建ては、建設許可と建設中件数そろって1桁以下の伸びとさえません。住宅ローン申請件数指数の低迷や家計債務動向をみると一般家庭は一戸建てに足踏みする半面、賃貸需要を見越して複合住宅の建設プロジェクトが増加の一途をたどっている様子がうかがえます。

(カバー写真 : Oregon Husky )


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年8月19日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。