今年もやって参りました、パンプ・アップ・ザ・ボリュームなファッション誌の9月号!はい、秋冬シーズンという業界の書き入れ時に合わせ発行される、1年で最も重要な月刊号です。
泣く子も黙るアナ・ウィンター女史を編集長に戴くファッショニスタのバイブル「ヴォーグ」、今年のカバーはスーパーモデルの新生児が初々しく飾ります。中央には英国が誇る良家の令嬢カーラ・デルヴィーニュ、左にはプエルトリコ出身で多人種系ファミリーから優性遺伝子を抽出したかのようなジョーン・スモールズ、右はアメリカ出身でビクトリアズ・シークレットのエンジェルでもあるカーリー・クロス。弾けるパワーが誌面から飛び出してきそうですね~。
3人による、美の競演。
(出所 : Vogue)
カバーは瑞々しいばかりにフレッシュながら実はヴォーグ誌に今年、異変が生じていました。米4-6月国内総生産(GDP)改定値が3期ぶりの高水準だったにも関わらず、全体のページ数は856p。2013年どころか、2012年をも大きく下回っていました。
肝心の広告ページ数も、当然ながら落ち込んでいます。今年は、過去最高を記録した2013年から4.5%減の631p。もちろん今年もファッション誌で最多のページ数を獲得していますが、モメンタムが失われた感は否めません。
以下、ファッション誌の広告ページ数ランキング、%は前年比になります。2013年版は、こちらをご参照下さい。
1位 ヴォーグ 631p 4.5%減
2位 インスタイル 485p 6.0%増
3位 エル 465p 5.2%増
4位 ハーパーズ・バザー 444p 11.6%増
5位 W 303p 5.2%増
6位 マリー・クレール 265p 7.3%増
7位 ヴァニティ・フェア 232p 1.9%減
8位 グラマー 215p 4.0%減
9位 ピープル・スタイル・ウォッチ 203p 6.3%増
9位 GQ 203p 横ばい
ベスト10のラインナップでもハーパース・バザー、マリー・クレール、Wなどハイ・ファッション系が好調でした。特にハーパーズ・バザーやマリー・クレールは、WSJマガジンに負けず過去最高を達成しています。
圏外での注目は、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙のアフィリエイトであるWSJマガジン。こちらは23.3%増の90pだっただけでなく、6年前の創刊以来で最高を記録しました。
こうしてみると、ヴォーグの一人負けが痛々しいほど。ファッション界をリードする雑誌の広告ページ数減少は、景気鈍化を先取りした動きなのでしょうか。
一方で圏外で落ち込みが目立ったのがラッキーで34.3%減の90p、ティーン・ヴォーグも33.9%減の112p、セブンティーンも6.2%減の106p。10代の読者層が多い雑誌が苦戦していました。カジュアル服飾ブランドのアバクロンビー・アンド・フィッチやエクスプレスなど、芳しくなかった決算と比例しています。
9月号の発売からしばらくして、ニューヨークではファッション・ウィークが開幕しました!ただ2013年から前夜祭「ファッション・ナイトアウト」を失い、5thアベニューを中心に盛り上がりに欠けるような……。
キックオフ・パーティの顔ぶれも、セレブといえばNY開催イベントの常連タイソン・ベックフォード、ドラマ「デスペレートな妻たち」でお馴染みのジェシー・メトカーフくらい。モデルでは歌手コーディー・シンプソンの彼女として知られるジジ・ハディッドやエスティ・ローダーの広告塔だったヒラリー・ローダと、絶大なオーラを放つ世界有数のスーパーモデルと呼ぶには力不足。プラザ・ホテルで5日にハーパーズ・バザー主催のジャズ・ライブにレディ・ガガが登場するというので、華々しくヘッドラインを飾れるか勝負ですね。
(カバー写真 : Reuters)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年9月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。