生活保護の需給世帯が過去最高の160万4000世帯に登ったようです。需給人数については(215万8840人)とピーク時の今年3月(217万1139人)と若干減少しているものの、時期を考えるに年度の境目以降運用を厳しくして政策的に一時抑え込んでいると推測され長期上昇傾向は覆しようがなさそうです。
内訳を見ると60歳以上の受給者が長期増加傾向で受給者数の50%を越えており、独居老人の一人世帯が国民年金や恩給だけで暮らしていけず生活保護対象者になるという流れが止まらないようです。一方で30代、40代の受給者数もリーマンショック以降着々と増えてきているところでこちらも気になります。日本の長期雇用慣行の中では「まっさらで低賃金な若者」の雇用が優先され、労働者が一定の年齢を超えた後に会社から突然放り出されると引き受け手がいなくなるということが背景にあるように思えます。
話を戻しまして「では生活保護受給者の半分を超える高齢者世帯の収入状況は?」と見ると、平均世帯員1.56人、平均世帯所得307.2万、うち年金収入207.4万、ということで年金収入が7割を超えていることが見て取れます。仮に年金収入が断たれたら彼らは生活保護対象に組み込まれるわけで、年金と生活保護は切っても切れない関係にあることが分かります。
こう考えると年金制度を持続可能なものにしないと高齢者世帯が怒濤の如く生活保護に流れ込むことが予測されるわけですが、一方の年金財政も運用がそれ程思うように行かず本来年度末積み立て140.8兆円と予測されていたところ126.6兆円と14兆円の不足がでており、基礎年金を補填する政府財政も借金まみれで【日本人の資産が1600兆円弱で、政府の借金が1200兆円弱、毎年の赤字国債が40兆円弱】と考えると「日本人が日本政府をファイナンスする」という現状の枠組みは単純計算で【(1600兆円ー1200兆円)÷40兆円】であと10年程度しか維持できないと考えられ問題山積みです。つまり結局は年金と財政を立て直さなければならない
とはいえ年金の運用は安倍政権になってから大幅に上向いており、いわゆるアベノミクスによる株価上昇の破壊力を感じるところなのですが、安倍政権としては引き続き株価上昇による年金積立金運用改善をはかるべく、これまで国債中心に割り振られていたGPIFの運用方針の見直しを進めていくことが見込まれます。実際GPIFの運用改革論者の塩崎恭久氏を厚生労働大臣に送り込んだことに、安倍政権の確たる意思を感じます。
GPIFは世界最大のファンドですからこのお金が株式市場に向けられるインパクトは凄まじいと思うのですが、その分運用リスクは増すわけで「我々の年金の将来は株価とともにある」と言ってもよい状況が生まれつつあります。これに「我々の貴重な年金資源でそのようなリスクの高い運用をするべきではない」との批判があることは分かりますが、かといって現実的にGPIFの運用成績を高めるために打つ手はこれくらいしか無いわけで、私たちの年金はこれから株価の上の綱渡りを開始することになることは既定路線です。
一方で財政再建にむけた税収増については「法人税をさげて、消費税を上げる」という税制改革とセットで、消費を冷やさないように経済界に対して「法人税を下げた分は賃上げして従業員に回し、可処分所得を増やして消費を活性化させる」という要求をしており、実際財界も一定程度その意をくむ方向で動いてこれが雇用社報酬の上昇という形で現実の動きとなりつつあります。我が国は本当の意味で国家社会主義なのではないでしょうか?
話はそれましたが、改造内閣で税制に関しては麻生財務大臣の担当するところで、谷垣幹事長が消費増税にむけて党内をがっちり固めるというわけです。麻生大臣には、GPIFとの関係で必要な株価の維持・上昇という裏の役回りもあり、日本郵政の上場や日銀と協調しての市場介入なども粛々と進める必要があり、その役割は重く、留任は順当でしょう。
そんなわけで今回の内閣改造は、こうした計画経済的手法の是非はともかくとして、年金・財政の立て直しという観点で人事が一貫しており「人事の妙」という観点では結構高く評価しても良いのではないかと勝手に思っております。
なんだかあっちこっちとんで尻切れトンボな記事ですが、ではでは今回はこの辺で。
編集部より:このブログは「宇佐美典也のブログ」2014年9月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のブログをご覧ください。