数十人の(自称)元慰安婦よりはるかに重要なのは、24万2000人が動員されて2万2000人が死亡した朝鮮人の軍人・軍属である。しかし戦後、日本に残った彼らは、軍人恩給も障害年金も受けられない。日本国籍がないからである。
彼らは多くの訴訟を起こしたが、「日本国籍のない元軍人には受給資格がない」としてすべて敗訴した。他方、彼らは韓国でも補償を受けられず、その存在そのものが抹殺されていた(2006年に韓国政府もようやく彼らを「戦争被害者」として認知した)。彼らはこの大島渚のドキュメンタリーで訴えるように、天皇陛下のために戦った皇軍として認知を求めたのだ。
これは彼らが帰化して日本国籍を取れば解決するが、そうすると彼らは韓国では生きていけない。日本でも、在日のコミュニティから排除されてしまう。日本と韓国から二重の差別を受けている在日の扱いが、戦後処理の最大の問題である。これを解決するために日本政府は特別永住資格を設けたが、それを「在日特権」などと批判する人々が、問題をさらにややこしくしている。
国家とは、第一義的には「自分は誰か」というアイデンティティである。たとえ朝鮮半島の植民地経営で、日本がインフラ整備をしたとしても、朝鮮人は心の底ではそれを許していなかった。軍人には徴兵された兵士はなく、軍属にも「強制連行」はなかったが、日本の植民地支配は免罪されない。祖国を奪われた人々の心の傷は、日本人にはわからない。