世界各国別、低賃金の職が占める割合ランキング --- 安田 佐和子

アゴラ

以前から、アメリカでの労働市場の改善に当サイトは疑問を投げかけてきました。そもそも賃金が伸び悩んでいる上、リセッション後に雇用創出が活発だった職こそ低賃金産業だったというデータもあり、ストリートにはミレニアル層を中心にホームレスが増える状況ですから。

モルガン・スタンレー(MS)のエレン・ゼントナー米エコノミストがまとめた「不均衡と消費(Inequality and Consumption)」と題したレポートでは、いかにアメリカの労働回復がいびつか読み取れます。

経済協力開発機構(OECD)の統計を元にMSが作成したチャートをご覧下さい。

2013年ベースで雇用全体に占める低賃金の割合は、アメリカが25%超で1位だったんです。日本は15%以下ですから、その差は10%以上に及んでいます。

ゼントナー氏は「米国の労働市場が回復し始めた2010年以降、創出された雇用の約65%が低賃金の職だった」と試算していました。

低賃金の職が増えるとあれば、賃金格差が生じるのは当然ですよね。賃金を中央値と平均値、1989年の60%から2013年には90%へ拡大していたんです。

こうした数値は2013年のものであり、2014年に改善したことは間違いありません。ゼントナー氏も足元こそ賃上げ幅が拡大する起点にあると捉えており、今後は自動車、家具、服飾などの消費が増加すると予想しています。

一方で、ビジネス・ラウンドテーブルが発表した最高経営責任者(CEO)見通しをみると7-9月期に鈍化が目立ちました。雇用増加を見込む声は34%と 前期から約10%ポイントも低下し、雇用縮小の回答も20%と前期の14%を超えています。設備投資を拡大するとの回答も、5%ポイント低下していました。

ビジネス・ラウンドテーブルの会長を務めるAT&TのスティーブンソンCEOは、センチメントの改善に税制改革、移民改革、貿易拡大などの必要性を訴えていましたが、活発化するM&Aの動きは見過ごせません。企業がM&Aで売上を支えようとすれば設備投資額は縮小し、人員も増員より削減されるケースが多いことでしょう。Fedの出口政策入りもあって、少なくとも賃金インフレが加速するかは慎重な楽観をもって見守っていきたいところです。

(文中写真:Morgan Stanley、カバー写真:Reuters)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年9月28日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。