今年のノーベル物理学賞が決まりました。青色LED(発光ダイオード、Light Emitting Diode)の開発により、名城大学教授の赤崎勇氏、名古屋大学大学院教授の天野浩氏、カリフォルニア大学教授の中村修二氏が選ばれました。
2006年に大阪で当方が取材した際の中村修二氏。
LED、というのは発光する半導体です。半導体なので、導体になったり絶縁体になったりする。LEDは電気エネルギーを光に変える素子であり、電子と電子が不足した状態である「正孔」が分かれて素子に飛び込み、再び結合する際に発光します。
受賞者の一人、中村修二氏を当方が取材した際、中村氏にねだって電子と正孔を男女関係にみたてて説明してもらいました。すると、電子を男性、正孔を女性とすれば、二人の間に高い山があり、なかなかデートできない状態からやっと会うことができてエッチをする、そうするとLEDが光る、と解説。これを「極性」のLEDと言うんだが、豪放磊落な中村氏らしい表現に笑ってしまったことを思い出します。
中村氏は現在、カリフォルニア大学サンタバーバラ校で「非極性」や「半極性」のLEDの技術も研究しています。中村氏といえば、勤めていた日亜化学との間で発明の対価を争った知財裁判が有名なんだが、東京地裁で和解した際、中村氏は日亜化学時代に発明した特許の権利を全て放棄しました。今回のノーベル賞受賞となった青色LEDは極性LEDであり、以前の発明に依存しない技術や研究をしなければならない以上、非極性や半極性という、さらに高効率で革新的なLEDを開発する方向しかなかった、というわけです。
中村氏は「非極性や半極性のLEDを実現することができれば、既存のLEDを完膚なきまでに打ち負かすことができます。非極性LEDでレーザーを作れば、より高密度のデータを読み取ることが可能なのでDVDなどの容量が飛躍的に増えるでしょう。さらに非極性技術によって黄緑LEDや黄緑色レーザーを実現できれば、スマホなどで映し出せる3Dプロジェクターも可能になります」と語っていました。前述した男女の例で言えば、非極性や半極性のLEDは男女の間に最初から高い山がない状態。簡単にデートしてエッチすることができ、効率も既存のLEDを圧倒的に凌駕します。
中村氏が教鞭をとり研究を続けているカリフォルニア大学サンタバーバラ校には、すでにノーベル賞受賞者が数人います。米国のトップレベルの理系大学では珍しくありません。中村氏は「ノーベル賞を取れば講義が免除になり、大学の駐車場に自分専用のスペースがもらえます。もし受賞できれば、それがうれしいです」と語っていたんだが、2000年の渡米以来すでに14年ほど。3人の娘たちも手元を離れ、米国生活にも慣れ、自身の技術を基礎にいくつか会社を起業し、日本では手に入れられなかった「正当な報酬」も得ることができているようです。
極性LEDで複数でノーベル物理学賞を授賞するより、中村氏にとってみれば非極性LEDのほうで単独授賞するほうがずっとうれしいでしょうし、納得のいく結果であることは間違いありません。彼にとって今回のノーベル賞受賞は、単に駐車場探しで苦労しない程度のものに過ぎないのかもしれない。しかし、日本人はノーベル賞が大好きです。これで日本人が、日本の大学制度や司法制度を辛辣に批判し続ける中村氏のメッセージに、少しでも耳を傾けてくれることを期待したいと思います。
PHYS.ORG
Two Japanese, one American win Nobel Prize in physics
大学内の書店から本が消える すべての教科書を電子化(米国)
カレントアウェアネス・ポータル
米国フロリダ州のある大学で、大学内の書店が紙の本の取り扱いを止めるようです。電子書籍の完全移行は、かなりの速度で確実に進んでいるようです。
Simone de Beauvoir: Feminist Icon Was Lesbian Pedophile
henrymakow.com
フランスの哲学者シモーヌ・ド・ボーヴォワールが小児性愛者だった、という記事です。1943年、彼女が教員免許を取り消されたんだが、その理由が生徒を誘惑したから、という話。彼女は『ブリジット・バルドーとロリータ・シンドローム』という本も書いているんだが、小児性愛疑惑は根強い。このウワサは真偽不明ながら反フェミニズム系の人たちがしつこく流し続けているようです。
Scientists Want To Test Lab-Grown Penises In Humans
POPULAR SCIENCE
再生医療は日進月歩で革新的に成果を上げているんだが、ヒトが失った臓器を作ろう、という行為には区別はないようです。この記事では、ペニスを再生する技術について書いている。人造ペニスを移植したウサギの実験では成功しているらしい。メスとセックスをして子どもまで産ませたそうです。
US Navy to deploy armed, robotic patrol boats
PHYS.ORG
米海軍がロボット巡視船を起用する、という記事です。バージニア州で13隻のロボット巡視船を使ったデモンストレーションが行われ、船団を組んで貨物船を守り、不審船を捜査したらしい。全長11メートルのこの巡視船、通常は3~4人の操作員が必要なんだが、これがいらなくなり、水兵たちを危険にさらさずにすませられる、というわけ。さらに、遠隔操作をするのではなく、自律的に行動する、という点が画期的です。ドローンなる無人ロボット飛行体が実用化されているんだから、海の上や水中でも同じような兵器が出現するのは当然でしょう。
アゴラ編集部:石田 雅彦