マクドナルド凋落は購買年齢層と価値観の変化ゆえ --- 岡本 裕明

アゴラ

本家アメリカのマクドナルドの7月から9月の収益が30%も下落したようです。理由として日本や中国の期限切れ鶏肉問題としていますが、この数年間の売り上げ、収益を見る限り明らかにそれとは違う原因がありそうです。ライバルが増えた、とも記されていますが、多分、このライバルの意味合いが以前とは違った重みとなってきているように思えます。


バンクーバーの新聞には「時代遅れの運営」でそれはCEOも認めるところ、としています。そこでメニューの簡素化と共にアメリカの東部で実験的にバンズやソースを選べるカスタムメイド方式を取ることにしたようですが、個人的には全然外している気がします。

今、40~50代から上の世代と30代から下の層では価値観が相当違います。それは育った環境が圧倒的に相違しているため、発想も違ってくるのはやむを得ないと思います。その30代以下の人でも10代と20代、30代でははっきりと違いが出ているはずです。理由は急速に進むITや世の中の変化に対しての順応性とでも言いましょうか?

例えばあなたはEmail派、それともテキスト派、あるいはLine派、といえばそれで年齢層が分かるぐらいであります。私が聞いた限りでは若者のEmailの使用率が下がっているようです。その理由はそもそもパソコンを開かないというもので、ほとんどスマホで処理してしまうのです。やり取りの継続性を考えれば一旦スマホを使えばずっとスマホとなりやすいことは事実です。

ところが40代から上の人のスマホには弱点があります。それは字が小さい、打つのが面倒くさいというものです。いやいや、60代になってもスマホテキストは当たり前ですよ、と私に豪語する人も老眼鏡をつけたり外したりで大忙しです。ましてやタブレット型となると年配の人には持ち運びに不便で触ったこともないという人が主流を占めるでしょう。

たとえ話を変えましょうか? クレジットカードと現金。日本人は現金決済が大好きであります。というより、小売店側も少額決済はお断りしているところも多いのであります。更には家電量販店では支払いは現金とカードでは割引率が変わってきます。ですから家電を買いに行くには多額の現金をATMで下して懐に忍ばせて交渉をしなくてはいけないのです。ところが30代ぐらいの人はクレジットカードが大好きになりつつあります。人によっては人の立て替えをしてまででもクレジットカードを使おうとするその理由はポイントをゲットして飛行機のマイルを貯めるなどの堅実さであります。

いわゆる年齢差の価値観の相違とは昔から言われたものでありますが、現代における年齢差とはそれを超えた時代背景の圧倒的相違からくるものであります。子供に鉛筆を持たせて字を書かせてみてください。小学生や中学生は恐ろしく字が書けません。いや、それ以上にへたくそです。ミミズが這うような字とはこのことです。理由は鉛筆を持たず、字は画面から変換する時代になってしまったからです(ご参考までに欧米人にボールペンで字を書かせてみてください。象形文字かと思うぐらひどいものです。これもタイプライターの世界ならではの背景です)。字を書けない子供を見て大人は日本文化も終わりだと嘆くのですが、若い人にはピンとこない、という事でしょうか。

では冒頭のマクドナルドとどういう関係があるのか、といえばマックでハンバーガーという時代は40代から上の人たちのよき時代の反映だという事です。ビジネスが生まれた時、その恩恵にあずかった人たちがもっともその商品や製品に啓蒙され、敬意を表します。例えば50代の人から上はウィンドウズ世代、40代はアップル、30代から下はグーグルといったようになっていくのです。ですからフェイスブックも同様の年齢を重ねていくはずで、10代の人たちの心はだんだん離れていくわけです。

アメリカに行くと古き良き時代のチェーン店をよく見かけます。しかし、街中の一等地に構えている店はもやはそれらオールドネームではなく、「今話題の○○」であったりするわけです。ではチェーン店の寿命はそんなに短くなったのか、といえば生き方を変えることでうまくやっているところもあります。例えばKFC、ケンタッキー・フライド・チキンはアメリカでは存在感が薄いのですが、フィリピンに行けば代表的チェーンであります。日本でも相も変わらずクリスマスになると大行列となるのは手を変え品を変え、そして世代を超えて愛され続ける努力をしたという事でしょう。チキンという呼称を禁止されKFCとした逆境を乗り越えたというフレキシビリティが一定の規模を維持できるキーだったとも言えそうです。

僕の常識、あなたの非常識とは世の中に普遍的なものがなくなったともいえるのかもしれません。価値観も年齢層により相違するとは世の中がグローバル化している中で年齢による仕切りラインができてきたとしてもおかしくありません。これは今後のビジネスに於ける大いなるヒントかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年10月23日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。