オンライン小売大手のアマゾン株価は23日引け後の時間外取引から雪崩のような勢いで落ち込みをみせ、24日には26.12ドル安(8.3%安)の287.06ドルで取引を終えました。7-9月(第3四半期)決算が失望を通り越して投資家に怒りを覚えさせる内容で、叩き売り状態。大きく窓を開けて寄り付いた後、一気に52週安値を更新しました。以下は、気になる決算内容です。
7-9月(第 3四半期)決算では、純損益は前年同期比で約10倍増の 4億3700万ドルだった。ビデオゲーム・ストリーミングサイトのトウィッチを11億ドルで買収したほか、7 月にAT&Tの独占販売契約を下に発売を開始したスマートフォン「ファイア」は199ドル(2万1490円)から9月に99セント(107円)への大幅値下げを余儀なくされ、赤字が拡大。インドでの電子商取引に20億ドルの出資も決断したほか、当日配送の食品小売サービスやクラウドサービスなど事業拡大計画も進行中で、営業損失は5億4400万ドルと前年同期比で20倍以上も膨らんでいる。
1株当たり利益は95セン トの損失と、市場予想の74セ ントより弱い。売上高は 20.4%増の205億 8000万ドルだったものの、市場予想の 208億4000万ドルに届かなかった。
「ファイア」、3D画像や画像検索に対応したものの販売不振に。
売上を地域別でみると、北米は25%増の103億ドルだったほか、海外も14%増の77億1000万ドル。本業のオンライン小売が好調だった半面、事業拡大路線が利益を大幅に圧迫している様子があらためて浮かび上がった。
数少ない明るいニュースとして、フリーキャッシュフローが挙げられる。10億800万ドルと、前年同期の3億8800万ドルから3倍近くの増加を遂げた。
ホリデー商戦を迎える 10-12月期の売上高は 273億-303億ドルを見込み、市場予想の308億 9000万ドルを大幅に下回った。純損益も5億7000万ドルの赤字から4億3000万ドルの黒字となり、最悪のケースでは7-9月期の4億3700万ドルから拡大を見込む。
——ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)の野心的な経営計画が裏目に出て、赤字垂れ流しに歯止めが掛かる気配は一向にみられません。
複数のアナリストは、結果に反応しています。カウエンは、投資判断を従来の「アウトパフォーム」から「マーケットパフォーム」へ引き下げました。カナコード・ジェニティは、目標株価を従来の340ドルから310ドルへ下方修正。その他クレディ・スイスが422 ドルから350ドルへ、オッペンハイマーは410ドルから372ドルへ、トピカ・キャピタル・マーケッツも395ドルから350ドルへそれぞれ変更しています。
これだけ惨憺たる決算結果でも、投資判断の引き下げは思ったより少ない。各事業へ投資が甘い果実をもたらさない割に、売上高の高い伸び率、本業での競争力、食品など取り扱い商品の拡大——などが評価されています。長期的な視野に立ってアマゾンを支持する市場関係者が存在する陰で「赤字を連発すれば、”物言う投資家” が介入してくるだろうから結果的に株価は上昇する」と冷静に皮算用する声が聞かれたのは興味深いですね。
(文中、カバー写真すべて:Getty Images)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年10月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。