世代間戦争としての「原発再稼動」

池田 信夫


川内原発の「再稼動」が決まったことで、また原発が注目を集めているが、NHKニュースの世論調査はちょっと意外な結果だ。上の図のように、「賛成」と「どちらかといえば賛成」を合計した回答は、30代以下でもっとも多い。この結果について、小林傳司なる人物が、次のようにコメントしている。

場合によっては事故は起こるかもしれないけれども、今の経済とのバランスを考えたときに、危険を覚悟のうえで選んだという感じがする。ただ、危ないかもしれないからやめておこうという議論と、危ないかもしれないけれども受け入れようという議論は、どちらが合理的か簡単には決められない問題だ。

これは誤りである。原発事故によって死者が出るリスクは、日本では(福島を含めて)ほぼゼロだが、原発を違法に止めて所得が低下すると、坂本龍一氏のような高度医療を受けられない人は早く死ぬ。石炭火力に切り替えると、年間数百人が多く死ぬ。エネルギー問題には、トレードオフはない。国連やOECDのすべての統計で、もっとも安全で安価でCO2を出さないエネルギーは原子力なのだ。

これは財政危機と同じ「世代間戦争」である。先の短い老人にとっては、現状維持して負担を先送りすることが合理的だが、若い世代にとっては増税やエネルギー価格上昇で貧困化するコストが大きい。老人が原発を止めて借金でボロボロにした日本経済で、そのコストを負担するのは30代以下の世代である。