米10月雇用統計で、時間当たり賃金の伸び悩みを確認しました。
なぜ雇用は着実に増加しているのに、賃金はなぜドジでのろまな亀のような歩みを示すのか。
ゼロヘッジは、ひとつの要因として非農業部門就労者数(NFP)のけん引役が「外食サービス」であることが挙げていました。
外食サービスの就業者数、オレンジの線が示すように増加トレンドを形成。
(出所:Zerohedge)
外食サービス(赤)の就業者がまもなく、製造業(青)を超える勢い。
(出所:Zerohedge)
ここで思い出して頂きたいのが、ウェイター/ウェイトレスをはじめとした外食サービスの時間当たり賃金です。米労働統計局(BLS)によると、2014年4月時点で時給の平均値は9.63ドル(1100円)、時給の中央値は8.91ドル(1020円)、平均年収は2万20ドル(230万円)。年収は、全米の中央値4万6440ドル(530万円)に遠く及びません。
ウェイトレス/ウェイターの年収は、紺色で示された全米中央値の半分以下。
ちなみに、製造業労働者の一例をみると食品加工で平均時給は13.41ドル、年収は2万7890ドル。鉄鋼・プラスチック加工だと平均時給は18.04ドル、年収は3万7510ドルとなり、いずれも外食サービスを上回っていました。米10月雇用統計・NFPのうち約20%を占める外食サービスの現状を踏まえれば、賃金が上昇トレンドに乗れない実体が浮かび上がってきます。
もうひとつ、家計調査での年齢別就業者数の前月比・増減幅をご覧下さい。
10月は外食サービスの雇用が伸びただけに20-34歳までの増加が目立ちます。また、55歳以上の堅調な伸びも見逃せません。10月の55歳以上の就労者数は3276万人と25-34歳の3221万人を超えているのも、気になります。
55歳以上は、ベビーブーマ—世代であり人口に占める割合が高いことも事実。また、本当であれば引退を迎える年齢層でもあります。この年齢層の増加が年初来から比較的しっかりしている理由は、1)ゼロ金利政策で金利収入に頼れない、2)子供を養う義務が残っている——などが挙げられるでしょう。特に2)はミレニアル世代の就職難が続くなか、ブーメランっ子という言葉まで生まれる始末。一度親元を離れ独立したものの、実家に帰ってきた子供たちを指します。こうしたいびつな現状では、ホリデー商戦での買い物先トップにディスカウント店が選ばれるのも致し方ありません。
(カバー写真:Business Financial Post)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年11月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。