2015年はどの国も自国のことで手一杯か --- 岡本 裕明

アゴラ

12月に入ると北米はクリスマス一色でビジネスも月の半ばぐらいでほぼ終わりになってしまいます。新しい年はもうすぐやってくるわけですが、2015年がどんな年になるのか、今後、マスコミなどで予想は増えてくるでしょう。私もある雑誌のコラムの1月号に恒例の2015年10大予想を書きますのでそろそろ筆を執らなくてはいけません。

個別の予想はともかく、概観してどんな年になるのでしょうか?


経済的には地球規模ではフラットな感じかもしかしたらやや苦戦するような気がしています。

アメリカの好調さは前半には陰りが見え中盤以降は利上げのリスクが取りざたされ多少ボラタリティが上がる様な気がします。気になっているインフレは1.7%まで来ていますが、石油価格が暴落している状況から12月以降のCPIは思ったほど上がらず、雇用回復はすれどインフレ率が十分ではなく、利上げになかなか踏み込めないというシナリオはあり得ると思います。

特に石油価格の下落で隣国カナダなど資源国の景気も下押ししています。欧州の景気は構造的問題が大きいため、マリオ・ドラギ総裁がどれだけ金融政策を推進してもここからの浮上は相当苦戦する気がしています。同じことは日本でもそうで、黒田日銀総裁の2年で2%の目標達成はほぼ絶たれたと思っています。先週の金曜日の株式市場ではOPEC総会での石油減産に至らず、石油相場の急落、日本でのインフレ目標達成困難のシナリオを受けて後場になって更なる金融緩和の声が出るかもしれないという株式市場の自己都合解釈で不動産株がボーンと上がっていたのは印象的でした。

最近のアジア欧州線の航空会社は直行便が苦戦して中東やトルコなどの航空会社のシェアが伸びてきています。イギリスのバージン航空が成田線を廃止する理由も他社にシェアを奪われているから、という事なのですが、その中東もオイルあっての中東であります。サウジであっても国家予算の計算ベースを下回るオイル価格が仮にも中期的に持続するようになればプライスリーダー云々という問題どころではないでしょう。

オイル価格の危険性とは先週の金曜日の様にブラックフライディで市場参加者が少ない時に売り崩せば大暴落を簡単に引き起こせるという事なのです。これからクリスマス時期を迎え、市場は閑散となりますから、そのようなゲームが展開されれば世界経済が「たったこれだけのことで」ガラガラと音を立てて崩れることすらあり得るのです。もしもオイルが30ドルで1年も続いたら破たんする国家すら現れ、世界は大混乱になりかねません。それも相場という非常に少ない参加者で世界経済をグダグダにできるのですから新種のテロリストとも言えるのです。

和平はどうなるでしょうか? これはもっと予想するのが難しいのですが、地域紛争は引き続きありそうですが、大問題にまでならない気がしています。理由は大国が自国のことで精いっぱいだからです。紛争は地域間で収まっていればどこかで収拾がつくものですが、大国がそのバックにつくことで複雑怪奇になってしまうのです。ところが今の石油価格からはロシアはとてもじゃないですが、力を発揮する余裕はありません。

中国は当面、自国のコントロールに腐心すると思います。経済の高度成長から中成長に軟着陸するためには国家の成熟が必要になってきます。国家の成熟とは拡大から現状の質を高めることですから外交より内政でしょう。特に経済成長7%という低め目標の設定がもたらす意味は不動産問題、地方都市の理財に絡む不良資産、環境問題に民族問題など習近平主席が力を注がなくてはいけない問題は山積しているという事です。

日本は今度の選挙結果に案外サプライズがある気がしています。個人的な着眼点は投票率と共産党の勢力地図であります。投票率は麻生副総理も低くなるとみているように盛り上がりに欠けるのでしょうか? アベノミクス選挙だとしても第三の矢を含め、アベノミクスの進展を邪魔しているのは自民党内部という声もあるぐらいですから誰に投票したらよいのかさっぱりわからないということでしょう。

共産党は今度の選挙では唯一の本当の野党です。与党が掲げる政策に対して主要部分で真っ向から対決するのは共産党ぐらいですから現政権に疑問を投げかけた人が共産支持に廻ってもおかしくないと思います。今回の選挙はそれぐらい歪んでいますから安倍首相があとで「しまった、やらなければよかった」と思わなければよいと思っています。

2015年を予見するうえで12月の流れは極めて重要なエッセンスがたくさんあります。ここをしっかり読みぬいて来年に備えることに意味が出てくると思っています。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年12月2日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。