ドイツ連邦議会で今月、自殺幇助(安楽死)に関する立法手続きが開始される一方、隣国フランスでは2年余りの準備の末、作成された「安楽死関連法案」が提出される予定だ。
ドイツ倫理委員会(Christiane Woopen 議長)は「自殺に対する刑罰はない。なぜならば、わが国には自由の原則があるからだ。それは自殺にも当てはまる。自殺は刑罰の対象ではない。同様に、自殺幇助にも当てはまる」という。
倫理委員会は今月、連邦議会で自殺幇助に関する立法手続きが開始される前に特別提案をする考えだ。ドイツでは多くの政党で自殺幇助の禁止を要求する声が強い。倫理委員会は「自殺幇助は医者の仕事ではないが、医者と患者の個人的信頼関係のもとで良心に基づいて自殺幇助をすることは受理されるべきだ」という立場を支持している。
一方、隣国のフランスでは今月10日にも「生命の終わりに関する委員会」が新安楽死法案を提示する予定だ。2005年に施行されたレオネッティ法(終末期患者の権利に関する法律)によると、同国では患者の延命器を外すことは、本人やその家族の願いがある場合に限り、許されるが、積極的な自殺幇助は刑法で禁止され、幇助した医者は最高5年の有罪を受けることになっている。新安楽死法案は一定の条件下で安楽死を認める内容と見られる。カトリック国フランスでは教会を中心に安楽死の公認には強い反対が予想される。
参考までに、自殺幇助が容認されているスイスでは毎年、欧州全土から安楽死を願う患者やその家族が集まる。スイスの自殺幇助グループ・エグジットが3月31日公表したところによると、昨年約450人の自殺幇助を実施したと発表した。エグジットによると、2012年約350人、11年300人、10年275人だった。
エグジットによると、昨年約8000人が会員となった。約2000件の自殺支援申請が昨年届き、そのうち約700件で具体的な話し合いが行われ、約450人が自殺を決定したという。自殺した人の平均年齢は60歳以上だったという。
スイスにはエグジット以外に、主に外国人を対象とする自殺幇助グループ、Dignitas(ディク二タス)が存在する。国内で自殺幇助が禁止されているドイツや他の国から自殺をするためにスイスに来る。
ちなみに、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクでは安楽死は認められている。特に、ベルギーは今年3月、安楽死に関する年齢制限を撤廃し、子供の安楽死を初めて認めたことから世界に大きな衝撃を投じたばかりだ。
なお、約50の自殺幇助団体が加盟する世界協会は先月、本部をニューヨークからスイスのジュネーブに移転することを決定したばかりだ。世界協会によると、「スイスは自由の避難所だから、最高の場所だ。ニューヨークは税的にも高くなった。新本部は来年オープンする」という。一方、スイスやドイツにあるエグジット関係者は「自殺幇助を願う希望者が増加している時、彼らがスイスに集中すればメディアの注目を浴び、ネガティブな反応も出てくるかもしれない」と懸念している。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年12月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。